協会活動のご案内

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 会報
  4. 連載企画 人とAIの共創時代 (3) AIに対する役割認識がもたらす能力発揮

連載企画 人とAIの共創時代 (3) AIに対する役割認識がもたらす能力発揮

前回までの連載では、AI に関する国際的な政策動向、そして ISO/IEC 22989 で定義された Human–Machine Teaming(HMT)が描く「人とAIの協働社会」の姿を概観しました。AIが単なる自動化ツールではなく、人と強みを補完し合う「チームメンバー」となっていく未来像を共有しました。

今回は「人がAIをどのように役割認識すると人は最も能力を発揮できるのか」という問いに迫ります。

1.前回までのおさらい

HMTでは、人とAIの上下関係・役割分担により、①Human Supervisor:AIが実務を行い人が監督 ②Human Mentor:人がAIを指導 ③Peer:人とAIが対等に協働 ④Machine Mentor:AIが人に助言 ⑤Machine Supervisor:AIが人に作業を割り当て、の5類型が整理されています。これらは単にサービスや技術の分類ではなく、「AIをどのように位置づけるか」という私たちのAIに対する役割認識を示しているとも言えます。

2.AIは「知識玉」である

最近の基盤モデルは、主に「インターネット上で自由かつ公にアクセス可能な情報」を学習しています。言い換えると、大規模言語モデル(LLM)は膨大なインターネット情報を圧縮し、高解像度の「知識玉」として蓄えている存在です。人間は、この「知識玉」から必要な情報をプロンプトで引き出し、可視化しているだけに過ぎません。近年、先端モデルが持つ知識の解像度は、既に一般的な人間を上回る領域に達しつつあります。

しかし一方で、AIには「身体性」「現場経験」といった、人間だけが持つ強みを得ることは難しいままです。だからこそ、今後の共創時代では「AIの知識」「人の経験」をいかに組み合わせるかが重要となります。

3.生成AIを「メンター」と認識すると能力発揮が高まる

ここで、現在私が研究中の興味深い知見として、大学生11名を2グループに分け実施したPBL(Project-Based Learning)実験があります。被験者はZoom上で生成AIと議論しながら、経営難に直面した老舗パン屋の売上データを分析し、改善施策を検討しました。実験後のアンケートから、AIの社会人基礎力(前に踏み出す力・考え抜く力・チームで働く力)への影響を定量化しました。

その結果、AIを「メンター(助言する存在)」と役割認識したグループは、AIを「メンティー(指導される側)」と役割認識したグループよりも、生成AIの利用割合が高く、実行力など前に踏み出す力が高まり、失敗を恐れず課題解決に向けた前向きな行動が促進されました。AIを「教える対象」と捉えるよりも、「頼れる助言者」と捉えた方が、人の能力が発揮されるということが示唆されました。

4.AIメンターとの協働が、組織の創造性を引き出す

生成AIをメンターと認識したグループがより高い能力発揮を示した点は、中小企業にとっても大きな示唆と言えます。AIを「指揮下に置く部下」と見なすと、どうしても人は慎重になり、AIへの依頼も限定的になります。しかしAIを「専門知識を持つ助言者」と見ると、積極的に相談し、行動に移しやすい心理が働きます。この心理モデルこそが、共創時代におけるAI活用の鍵になるでしょう。

中小企業にとってAIは、人手不足の補完だけでなく、社員一人ひとりの能力を底上げし、意思決定のスピードを高める触媒となり得ます。とくに課題解決型の業務、企画立案、経営改善プロセスにおいて、AIメンターの活用は大きな効果をもたらす存在となるでしょう。

5.AIを「メンター」にすると、人はもっと強くなる

AIの知識解像度は日々向上し、既に人間が単独では到達できない領域に達しています。しかし、AIは現場経験や身体性を持つわけではありません。だからこそ、人の経験×AIの知識という掛け合わせが、これからの時代の競争力になります。実験が示したように、AIをメンターとして認識したとき、人は最も能力を発揮しやすい。

この視点を業務に取り入れることは、中小企業にとって大きな成長機会となるでしょう。

【井上 雅之】

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

関連記事

活動のご報告