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診断士インタビュー
山本邦雄さん
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診断士の匠「経営全体を診ることが中小企業診断士の役目」

中小企業診断士として長くご活躍されている先輩から、知恵やアドバイスをいただく『診断士の匠』。今回は独立診断士であり、DXを活用した中小企業の技術継承や効率化の専門家として経営支援に従事されている山本邦雄さんにお話を伺いました。
プロフィール
・独立診断士
・2010年診断士登録
・横浜企業経営支援財団 技術アドバイザー
・中小企業基盤整備機構 海外アドバイザー
・横浜商工会議所 アジア展開支援アドバイザー
●ご経歴と独立までの経緯を教えてください
大学卒業後、工業計器・プロセス制御システムの電機メーカーである株式会社横河電機に入社しました。システムエンジニアとして石油化学・食品・機械といった幅広い業種でERP導入などの業務に従事したほか、クライアントの海外展開の業務も経験しました。2010年に中小企業診断士登録した後、会社員を続けながら中小企業基盤整備機構やIDECなど公的支援機関でのアドバイザー業務、民間の顧問派遣サービスに登録して企業支援の経験を積みました。勤務先を定年退職した66歳(2021年)の5月に独立し、現在は公的支援機関の業務に加え、経営顧問として8社の中小企業に伴走しています。
●独立して良かったこと
自分でやりたい仕事を決められることです。会社員ですと管理職として部下も育成しないといけません。しかし独立診断士であれば、支援先の経営力向上という一つの目標に向かって、自分の全力を掲げられます。
●現在のお仕事内容を教えてください
中小企業のベテラン技術者が積み上げてきた「暗黙知」である技術の継承や効率化を、DXを活用して支援しています。
例えば、製造業のベテラン技術者の作業風景を動画に撮影し、コンテンツ化していきます。ベテラン技術者は目の動き、手の動き一つとっても無駄がない動きになっており、それらには全て理由があります。しかし、若手技術者がそれを習得するには長い時間がかかるほか、人手不足で忙しいので、ベテラン技術者から若手技術者に手取り足取り教える時間もありません。そこでベテラン技術者の作業風景を動画コンテンツとしてまとめるとともに、なぜこのような動きになっているのか、言語化されていないノウハウも一緒に見える化します。DXを活用した技術継承の支援は、製造業を始めとして、介護分野や美容室などでも行っています。
●若手や新人診断士にメッセージをお願いします
① 全体を診ることで長期の顧問契約につながる
組織人としての会社員生活が長いと、業務の一部分や枝葉末節に目が向きがちです。しかし、中小企業診断士に求められていることは、企業の経営全体を診る目です。全体を診る目を持つことで、支援先に対して、経営全般から製造・販売まで一気通貫の支援をすることができます。その結果、顧問契約も長く続きます。一番長い顧問先とは7年の付き合いになりますが、販売だけ、製造だけといった一部分の支援だけでは、長期の顧問契約は続かないでしょう

② 分からないことはとことん調べる
自分ひとりでやっていると分からないことにも時折出くわします。そのような場合は、会社員時代に築いた人脈を生かし、詳しい人を紹介してもらうほか、自分でもとことん調べます。最初は分からなかったことも、自分で調べることで、今後他の支援で活用できますし、自身の支援ノウハウとして溜まっていきます。よい人脈は自分からつくりにいくものです。自分のレベルがあがれば、つながる人脈もレベルの高いものになります。

③ 問いを活用し経営者の気づきを促す
経営者は会社のなかで誰よりもその会社の事業について詳しい人です。中小企業診断士が外から「ああしろ」「こうしろ」と上から目線で言うと、経営者のプライドが傷つきます。「なぜ社長はそうしているのですか」など、問いかけを活用しながら、経営者が自ら改善点に気づくことが大事です。

【米澤 智子】