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中小企業診断士 養成課程出身者座談会

中小企業診断士試験の1次試験合格者が、所定のカリキュラムを修了することで診断士に登録できる「登録養成課程」の出身者が増えています。1962年から中小企業大学校が開講していましたが、2005年から民間や大学院にも開放され、現在は全国14機関に(下記リンク先に一覧表 *1)、首都圏には8機関(東京7,千葉1)があり、神奈川県協会で活動する出身者も多数います。協会では各機関との連携を深めていきたいと考えており、会報初の企画として、養成課程出身者による座談会(オンライン形式)を実施しました。令2会から令5会までの5人が、養成課程の実像と魅力を語ってくれました。

メンバー紹介(養成機関の設立順。上記の皆様のプロフィールもご参加ください)
清水佑亮(しみず ゆうすけ)さん
御庭肇((おにわ はじめ)さん
三枝道雄(さいぐさ みちお)さん
明田知大(あけだ ちひろ)さん
島田透代(しまだ ゆきよ)さん

*1 中小企業診断士の養成課程機関一覧 https://onl.tw/R2U81zr
■実践スキルを取得、大学院はダブルライセンスも
司会
まずは、養成課程、特に自身の実施機関を選んだ理由、合格までのプロセスを教えてください。
清水
日本生産性本部の課程を昨年秋に修了しました。2年前の2次試験を受ける少し前に、養成課程という道もあることを知りました。会社ではマーケティングの仕事をしていますが、試験から得られた知識だけでコンサルティングができるのか、という不安もあり、養成課程の道も探ってみました。公益財団法人という公益性があり、生産性に関するシンクタンクで、アメリカから日本にマーケティングを持ち込んだりしたのも生産性本部だということを知り、生産性本部一択としました。また、半年間という短期集中で修了できるのも魅力でした。エントリーシートを出して面接を受けて合格となりました。合格倍率は非公表ですが、3倍ぐらいだったと思います。会社は休業して半年間集中して通いました。
御庭
日本マンパワーの課程を2020年に修了しました。勤務先の銀行では診断士を育成しようということで、資格学校の受講補助は出ますが、当時は1次試験のみで2次試験は自力。2次試験は1度受けましたが、よくわからないという感触でした。帰り道にマンパワーのチラシを配っていて、養成課程があることを知りました。銀行では経営者の方とはよく会うのですが、実際にDD(デューデリジェンス)や計画書の作成はあまりしない。その点、養成課程だと診断実習に力を入れているので非常に魅力があるなと。受験者数は年々増加していますが、私のころの倍率は3倍ぐらいだったと思います。筆記試験を受けた後、集団面接して合否が決まる形でした。
三枝
東洋大学大学院を2021年に修了しました。診断士試験は独学で勉強していましたが、2次試験は模範解答がなく予備校の解説もまちまちで、得体が知れないものだという思いを持ちました。そこに長い時間かけて勉強するモチベーションが見出せずにいたところ、養成課程の広告などに実践的スキルが得られると書いてあり、短い時間で診断士が取れた方がよいかなと思いました。東洋大は大学院なので、診断士とMBA(経営学修士)のダブルライセンスが取れるところに心ひかれました。また、会社を辞めずに通えるし、大学の図書館も充実しています。最終的には養成課程の先生のお人柄にひかれました。試験は中小企業に対する改善提案などをディスカッションして採点されたと思います。今は受験人数も増え、合格できていないかもしれません(笑)。
明田
千葉商科大大学院を今年修了しました。三枝さんが言われたように2次試験は得体が知れず、何を学んだら合格するのかわからない中、養成課程を知りました。平日通うのは無理なので、土日しか授業がない千葉商科大を選びました。試験は個人面接の後、グループディスカッションで「千葉県を活性化するにはどうするか」を論議し、取りまとめたことを発表する内容でした。競争率はわかりませんが、何とか潜り抜けた感じです。心がけたのは、なぜ自分が診断士になりたいか、をしっかり地に足ついた言葉で伝えることでした。
島田
城西国際大大学院を2022年に修了しました。1次試験を3年かけて合格する予定を立てていたのですが、運よく合格してしまいました。2次試験対策はしていなかった状態で、今年は絶対無理、来年も受かるのか不安な状態でした。そんなときに1次試験会場で配っていた養成課程のチラシを見直したら、実務に生かせるということが書いてあって、インターネットで各校の公式な情報やSNSの口コミも調べました。城西国際大の説明会に行ったところ、平日の夜でしたが、働いてから来ているような方が多く参加していて、同じ境遇の方も多いのかなと思って、受験番号1番で申し込みました。大学院はMBAも取得できるし、城西国際大はITコーディネータの資格も取得可能なのを加味して受験したのが始まりです。
■5回の診断実習で成長、仕事・家庭との両立には苦労も
司会
養成課程はどんなところか、どんな勉強をするのか教えてください。苦労した点は?
清水
同期は日本全国から来ていて、20代から60代後半まで幅広く、地銀や金融公庫からの企業派遣の方もいました。会社を休職した方、辞めた方、60歳で定年を迎えた方もいました。授業は前半が座学中心で、コンサルタントに必要な様々な知識を約2か月間びっしりと学びます。毎日レビューをまとめたり、課題が出たり、かなり大変でした。後半は診断実習を5回やりますが、実習は6班に分かれて、毎回10日間現地で朝から晩まで泊まり込みで臨みます。実習の前から分析作業が始まって、実習中は寝られない日も何日かありました。その分、同期とは年齢や業種を超えた関係になって、卒業した今でも同期とは連絡を取り合う仲です。養成課程を通じて、経営コンサルタントとしての知識、スキルも学ぶことができました。
御庭
講師の先生方が実務家で、休憩時間に実務的なヒソヒソ話もしてくれて非常に参考になりました。先生方とのつながりは卒業後もあって、独立や兼業が可能な方には仕事の紹介もしてくれます。授業では24人が4班に分かれます。前半は座学で、ディスカッションして各班で発表し、それにコメントする形です。話を聞いているだけではなく、必ず意見が求められます。後半の診断実習は5回。最初の2回は財務資料がなくて、残り3回は財務資料も入れてフルコンサルでやります。弁護士や社労士、金融機関、メーカーなどいろいろな業種の方もいたので、様々な知見を入れてコンサルティングします。事前準備で財務諸表をもらったら、分析して、共有してと、協力して進めるのが非常によかったと思います。苦労した点は診断実習の日程があまりなくて、最終的な提案書をまとめるのが大変でした。
三枝
同期が20人いて、全員企業勤めでした。博士前期課程の中に中小企業診断士登録養成コースが設けられていて2年間かけて修了します。勉強は、座学が約400時間、診断実習は5回で、1社あたり1か月半くらいかけます。第一線で活躍するコンサルタントの他、公的支援機関の方、税理士、経営者から実践的な講義をしてもらえます。経営学のアカデミックな理論を学ぶため、統計学もあって面食らいましたが、いずれの講義も活発なディスカッションをして体で覚える形です。並行して1年からゼミに所属して自らの研究を深めます。2年の7月ぐらいに論文の中間発表、正月明けに4万字、400字詰め原稿用紙で100枚相当の論文を提出するので正月気分はありません。最後に口述試験と診断士の最終試験がありました。診断実習と修士論文の研究を両立させるのが想像以上に大変でした。診断実習が始まると論文はとても書いていられません。実習の合間に必死に先行研究を集めたり、論文を書いたり。2年間、休みは全くない感じです。有休も平日の実習に使います。初めはそのペースがつかめず、診断報告書のまとめがギリギリになって、大学の閉門時間を過ぎてしまい、仲間と裏口から下校したこともありました。
島田
城西国際大学大学院の場合は、診断士資格に必要な知識や経験のほか、情報・通信分野、マーケティング分野、国際的な分野に力を入れているため、各講義にそのエッセンスが散りばめられているのが特徴です。そのほか個別の論文研究があります。そもそも大学院に行くのは大学時代に考えたこともなかったので、知らない業界・分野については、調査の仕方もわからず高い壁しかありませんでしたが、この歳にして限界に挑戦することを体験できました。同期の14人には大変助けられました。本来は子どもの宿題を心配する母の立場ですが、逆に子どもに「宿題は終わったの?」と心配してもらった2年間でした。
■同期生は一生の友、将来像を固める時間にも
司会
皆さん、仕事や家庭との両立には苦労されたようですが、養成課程に行ってよかったことや、2次試験合格では得られないメリット、実務上役に立ったことは何でしょうか。
清水
メリットを先に言えば、診断実習が充実していて良かったですね。生産性本部は経営コンサルタント養成コースの中の診断士養成課程なので、経営コンサルの養成という位置づけで、現役のコンサルの先生が教えてくれる診断実習は、実務経験がなくても、体で覚えることができました。地方案件も多くて、伊勢のお土産屋さん、南紀白浜や伊香保温泉の旅館、沖縄の製造業など、日本各地の様々な業種と出会えます。その場で10日間、寝食忘れて臨むので、年齢の上下を問わず、良い仲間ができて、それがかけがえのない成果だと思います。また、成績上位者には「日本生産性本部認定経営コンサルタント」という称号も受けることができ、それもメリットでした。
御庭
一つは人のつながりですね。同期24人は当然ですが、過去の卒業生全員で2021年にOB会を作り、今、会員が約100人です。フェイスブックのグループなどで独立している方は、仕事の紹介をしたり、年2回の勉強会もしたりしています。もう一つは、診断実習がよく、実習報告書を作る経験は、2次試験では得られない部分かなと。今、中小企業活性化協議会で中小企業の再生にかかわっていますが、公認会計士や診断士の方が作るDDや計画書をみても、遜色ないものもあり、独立する方にとって養成課程はいい経験になるのかなと思います。
三枝
お二人と同じで、仲間とのつながりができたことです。金融機関の方から融資の考え方などの本音を聞けたのは貴重な体験でした。特任教授からコンサルタントの思考法を徹底的に教わったのも2次試験では得られないメリットでした。「思考法」のテキストには、提案書を作ったり、プレゼンをしたりするときのポイントが書いてあり、あらゆる実務で参照しています。具体的には、支援先に「思考法」に基づいた提案をした際、支援先の社長に「そうだよ、これがやりたかったんだよ」と言われ時は、学びが生かされたと思いました。修士の勉強では、物事の真理を探究する方法が身について、学ぶ姿勢そのものが全く変わりました。修士論文で「イノベーションのメカニズム」をテーマに、イノベーションがどのように生み出されるかを研究したので、新事業をやりたい支援先があれば学びを生かせるのではと思います。
明田
私は三つありまして、一つ目は人とのつながりですね。高いお金を出して、土日をつぶしている志が高い人の集まりなので、切磋琢磨して2年間どっぷりつかり、一生お付き合いできる仲間ができました。二つ目は講師が診断士の方ばかりで、生き方を含めて勉強になったこと。三つ目はゼミでの修士論文を苦労して書き上げて製本にしたとき、一つの自信になりました。
島田
講義がたくさんある中、特に、経営相談に関するシミュレーションや、経営革新計画などの書類を実際に作成してみること、企業を訪問する診断実習などは、卒業後の診断士資格ホルダーとしての実務の実践にすごく即していて、貴重な時間だったと思います。全国から集まった同期も、様々なバックグラウンドを持っていて、優秀な方が多かったので様々な分野の専門的な知見を生かしたグループワークはとても充実していました。2年間という時間で、自分の卒業後の将来やビジョン、自分の強みをじっくり考えることができたのがよかったことだと思います。
■養成課程から神奈川県協会に入るメリットは?
司会
最後に、養成課程から神奈川県協会に入ってよかったことは何でしょうか?
清水
生産性本部の同期は4人、令5会に入りました。まだ入ったばかりですが、人間関係を作っていきたくて、理論政策更新研修委員を務めることにしました。そこで県協会の魅力を味わっていきたいと思います。
御庭
私はマンパワーOB会の立ち上げで忙しい時期と重なり、行事にもあまり参加できませんでしたが、メールでも定期的に仕事の紹介や理論政策更新研修の案内も来る。どんどん積極的になればいろいろな行事に参加できるのがよいところ。こうした座談会の試みもありがたい。
三枝
養成課程を出て1年目のとき、県協会のイベントで独立診断士の方が講演し「企業内診断士の方、一緒に仕事しませんか」という呼びかけがありました。試験合格だと経験がなくて不安なので手を挙げなかったと思いますが、養成課程で5回の実習をしたバックグランドがあったので思い切って手を挙げることができました。協会での声掛けと養成課程での学びがうまくマッチして複数の補助金の仕事に結びつきました。養成課程の経験が県協会をきっかけに仕事につながったのはラッキーでした。とても感謝しています。
明田
協会に同期は7人います。養成課程だからこそよかったと思うのは、同期の間で、あそこの研究会に入ろうとか本音の意見を情報交換できる点です。先輩には同期会の会長もいて、親近感がわきます。養成課程の同期を通じて、輪を広げたいと思います。実際、研究会などに入っていくと、神奈川県協会の皆さんは優しくて温かい。入ってよかったと思っています。
島田
入会の目的の一つは診断士の活躍の可能性を知りたいということと、もう一つは、巷での診断士の知名度は高いとは言えないので、みんなに知らせたいという思いでした。活躍の可能性という点では、メールでの募集案内がくる中で、理論政策更新研修委員やフェスタ、スプリングシンポジウムで応募したところ、採用いただき、そこで委員の皆さんの日頃の活動について情報交換できるのが良いです。もう一つの診断士の素晴らしさを知らせたいという点では、本日のような機会をいただけ、養成課程というキーワードをきっかけに広がる世界も、非常に広く感じています。
司会
ありがとうございました。これからも養成課程のネットワークも生かした活躍を祈念いたします。
【司会・構成 遠田昌明(城西国際大学大学院修了)】