診断士インタビュー
小川直樹
会員
診断士の匠「ありたい姿まで行動変容を促す伴走支援を!」
- 診断士として長くご活躍されている先輩から、その知恵やアドバイスをいただく『診断士の匠』。
今回は、(一社)首都圏産業活性化協会にて、中小企業のDX推進や生成AI活用促進のプロジェクトを担当され、さらに(地独)神奈川県立産業技術総合研究所における生成AI活用促進事業の専門家派遣・コンサルティングなど、多方面で精力的にご活動されている小川直樹さんにお話を伺いました。 - プロフィール
- 大手電機メーカーにおいて研究開発職・システムエンジニア職及びマーケティング職を経て2023年に独立。
小川経営研究所代表
2002年4月中小企業診断士登録 - ■現在のお仕事((一社)首都圏産業活性化協会)について教えてください
- 私は一般社団法人首都圏産業活性化協会(TAMA協会)でデジタルビジネスプロデューサーを務めています。同協会は1998年、新連携(異分野連携新事業分野開拓計画)をきっかけに、地域企業・大学・自治体・商工会などによって「TAMA産業活性化協議会」として設立されました。現在は、企業、教育機関、公益法人、自治体、金融機関など計566会員(2025年9月現在)を有し、会員費による自主財源で運営されています。主な活動は、3つあります。①イノベーション創出支援②価値デザイン経営の実現、③人材育成です。私は、特に③「人材育成」において、DXや生成AIに携わる人材の育成を中心に取り組んでいます。
- ■TAMA協会に所属していて良かったことを教えてください
- 診断士としてのスタートは企業内診断士でしたので、企業や自治体との接点には限界がありました。TAMA協会から活動機会を頂けたことは良かったです。活動を通じて築いた信頼関係は、今でも顧問契約など個別のお仕事につながっています。また、診断士を含めた多様な士業の専門家の仲間とともに大規模なプロジェクトに取り組めることも魅力です。イノベーション創出支援では、「交流・連携・創造」という3つのレイヤーがありますが、最上層の「創造」では事業成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech)の補助金を活用した大きなプロジェクトも進められます。更に、28校の理工系大学が参加していることも特徴です。大学の研究室と一般企業では価値観や視点そして目的が異なりますが、両者を橋渡しする事務局(診断士)の役割は非常に重要です。私自身が理工系学部の出身で企業勤務経験もあり、その経験を活かせたことは大きな強みになっています。
- ■仕事の中で特に大切にしているモットーや考え方を教えてください
- 私が大切にしているのは「行動変容」です。神奈川県立産業技術総合研究所の生成AI活用促進事業において、セミナーや研修講師を務めることがあり、ワークショップ形式の体験型にしています。座学も有益ですが、知識を得て終わってしまうことが多く、実際に会社に持ち帰って活用されないケースがあるからです。私のモットーは、単に知識を伝えるだけでなく、企業に導入を支援し、従業員の業務に組み込み、成果(売上)につなげるところまで伴走することです。
- ■若手診断士に向けてのアドバイス、メッセージをお願い致します
- 診断士を医者で例えるなら、まずは「町医者」を目指してほしいと思います。相談者の声に耳を傾け、状態を診て、必要な対処を判断し実行することです。その力を磨いてください。そして独立診断士を目指すなら、「糖尿病専門クリニック」のように専門性を確立し、差別化を図ることが不可欠です。私はこれまで、「営業力向上の仕組みづくり」・「Web活用による集客力アップ」・「製造業におけるDX推進」・「生成AI活用」・「サイバーセキュリティ対策」といった分野に強みを活かして独立診断士として活動しています。また、生成AIのように進化が早い領域では、日々の情報収集と学習が不可欠です。加えて、近年では脱炭素化の重要性を見据えて新たに学びを深め、現在は公益財団法人横浜企業経営支援財団(IDEC横浜)で脱炭素経営アドバイザーも務めています。そして、診断士の活動の中で新たな課題に直面した際には、柔軟に学び続けることで相談者(診断先)に応えていく力をもってください。
- ■後記
- 小川さんのお話からは、専門性を磨き続ける姿勢と同時に常に現場に寄り添い伴走する診断士としての在り方を学ぶことができました。多忙な日々の中でも学びを止めず、さらには趣味の時間も大切にしながら診断士としての活動を楽しんでいらっしゃる姿が印象的でした。診断士として成長していくためには「学び続けること」と「楽しむこと」を両立することが大切であると改めて感じました。
- 【川村 昇】