連載企画 中小企業における経営企画について (2)
なぜ中小企業に経営企画が必要か
【第1回の振り返り】
前回は「経営企画とは何か」を整理しました。経営企画は①経営戦略の立案、②数値計画の策定、③進捗管理と改善、④情報収集と提案の4つの柱から成り立ち、中小企業にも必要不可欠であることをお伝えしました。
今回は、その「必要性」について掘り下げていきます。
1.短期対応に偏る中小企業の経営
多くの中小企業では、経営者が売上や資金繰り、顧客対応に追われ、将来のことを考える時間を確保できていません。その結果、意思決定は「今月の売上をどう維持するか」「当面の資金をどう確保するか」といった短期的課題の解決に偏りがちです。
もちろん緊急対応は必要ですが、戦略的な位置づけがなければ同じ問題が繰り返され、経営は「場当たり的」になってしまいます。売上減少への広告投下や資金調達などは一時的な効果しかなく、成長や競争力強化につながらないのです。結果として経営者は「問題対応の連続」に疲弊し、事業承継や後継者不足の背景になることも少なくありません。
2.経営企画がもたらす未来志向の効果
経営企画を備える企業は、市場動向や外部環境を定期的に分析し、自社の強み・弱みを踏まえて中期的な方向性を描きます。その上で、資金繰りや人材採用、設備投資を計画的に行い、限られた資源を最大限に活かします。
たとえば、3年先を見据えて人材採用を行えば成長に必要な戦力を確保でき、技術革新を踏まえて設備投資を行えば競合より早く新商品を投入できます。こうした未来志向の動きは、競争優位を築く大きな武器です。
さらに、経営企画は「数字の計画」にとどまりません。経営者の頭の中にあるビジョンを言語化し、従業員に共有することで、組織全体が同じ方向を向けるようになります。「自分の仕事が会社の未来にどうつながるのか」が理解できると、従業員の主体性やモチベーションは高まり、組織の一体感も増します。採用・定着の観点でもプラス効果が期待できるでしょう。
加えて、経営企画は外部への信用力にもつながります。金融機関や取引先に対して、将来像と計画を示せる企業は信頼度が高まり、融資や新規取引で有利になるケースも少なくありません。
3.中小企業こそ経営企画が求められる時代
「経営企画は大企業のもの」と考える方もいますが、むしろ資源が限られる中小企業こそ必要です。資金や人材を効率的に活かすためには、先を見据えた戦略的配分が欠かせません。経営企画を持つ企業とそうでない企業では、5年後・10年後に大きな差が生まれます。
現代はデジタル化の進展、消費者ニーズの多様化、人材不足、物価高など、変化が激しい時代です。こうした不確実性の中で場当たり的に経営を続けることはリスクを高めます。一方で、経営企画を備えた企業は変化をチャンスに変える柔軟性と持続力を持ち得ます。
また、経営企画は「未来への安心感」を経営者にもたらします。経営者の多くが抱える不安は「将来が見えないこと」に起因します。経営企画があれば、道筋が示され、日々の意思決定にも迷いが少なくなります。その余裕があるからこそ、新たな挑戦や投資に踏み出せるのです。
経営企画は中小企業にとって「未来への羅針盤」であり、成長と存続を左右する重要な機能です。次回は、中小企業診断士が“社外の経営企画部”としてどのように関われるのか、その具体的な役割を取り上げます。
【大澤 一樹】




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