診断士インタビュー
齋藤裕二さん
会員
診断士の匠「若手診断士、独立を目指す診断士へのメッセージ」
- プロフィール
- 齋藤裕二さん 独立診断士
・合同会社サニーブリッジ・コンサルタント代表 - 今回は、横浜企業経営支援財団(IDEC)の登録専門家として、長くご活躍されている齋藤裕二さんよりお話を伺いました。齋藤さんは、勤務先の早期退職制度をご活用し独立をされて、中小企業診断士としての第二の人生を歩まれています。これから独立を計画している読者の皆さんは、ぜひ、ご参考にしてください。
- ―まず、現在のお仕事について教えてください。
- 2016年から丸5年、横浜企業経営支援財団(IDEC)の経営相談員と横浜市信用保証協会の登録専門家を務めています。また、2019年から神奈川県事業承継引継ぎセンターの登録専門家を努めております。主に事業承継とシニア起業支援を専門分野としています。
事業承継に注目したのは、登録専門家や経営相談員の業務において、高齢の経営者に接する機会が多かったためです。有料の事業承継養成講座に参加するなどして、当分野の専門知識を得てきました。 - ―大手鉄鋼メーカーから独立されたきっかけは?
- 1980年に鉄鋼メーカーに入社し、本社部門で、主に設備投資管理業務や原料の購買業務を担当した後営業部門に転じました。その後、1998年にリサーチを担当するグループ会社に出向し、産業技術・市場調査に従事しました。グループ会社に出向した頃から、将来の独立を計画して、診断士を目指すようになり、2005年に資格を取得しました。
その後、企業内診断士として活動しましたが、独立後、現役診断士としての活動期間を10年以上確保するためには、遅くとも55歳が限界だと考えて、2013年に勤務先の早期退職制度を活用して独立をしました。
- ―さらに合同会社サニーブリッジ・コンサルタント設立の経緯は?
- 経営相談員として、会社を作る相談を受ける機会が多くあるため、まず自ら、会社設立の手続きや設立後の会社運営を体験したうえで支援を行いたいと考えて、会社を設立しました。
- ―今、中小企業支援の現場でどのようなことが求められていますか?
- 求められていることは、相談相手と、相手の置かれた状況によって異なります。まず、相手が「創業前後の会社」の場合は、事業計画が曖昧かつ甘い場合が多いので、どんなことを考えないといけないのか、出来るだけお伝えします。また、甘い計画があれば正しています。
相手が「成長中の会社」の場合は、事業が人に依存したケースが多いため、人手不足や人材確保のため人材育成の話を強調します。また、相手が「業歴の長い会社」の場合、まず経営者に過去の成功体験を忘れて貰うことにポイントを置いています。経営者の意識を変えることは、なかなか難しい面もありますが、時には厳しいこともお伝えしながら、現実を直視していただきます。
事業承継については、一つひとつの企業で状況は異なります。その時々に事業の状況や経営状態に応じて、手順も優先順位も異なりますので、診断士として総合的な視点に基づき、事業承継課題を見極めてから、適切に支援を行うことが求められます。
後継者の育成のための情報提供も診断士に求められます。このために、あらかじめ後継者の教育資料を準備して、いつでも提供できるようにしています。また、現経営者との打ち合わせには、後継者となる息子さんに同席して貰っています。大半の場合、親子で経営に関する話しを出来ていませんので、コミュニケーションの仲立ちをするのも、診断士の役割と考えています。
- ―齋藤さんがコンサルタントとして大切にされていることは?
- 事業者さんの目線や実行能力にあった提案、助言を行うことを大切にしています。診断士の経験が浅い方は、自分の知識の中で、実現したいことを、支援先に提案する傾向があります。しかし、相手の能力や興味を見極めたうえで、実現可能性があることを提案しないと、時間をかけて検討した提案も絵に書いた餅に終わります。
また、事実に基づく提案を心がけています。これまで述べた「相手の状況に応じて提案」を行うためには、まず、相手を良く見て、良く聞いて、データを客観的に分析して「事実を把握」することが大切です。
- ―プロコンとしての自己研鑽で励まれていることは?
- 専門家として、国の動き、補助金の動きを常に見ています。そのためには、お金を惜しまずに、有料のセミナーには参加しています。県協会や士会に参加することも、幅広い情報入手に役立っています。
- ―今後のビジョンは?
- 70歳までは、現役診断士として、経営者に寄り添っていきたいと考えています。企業支援のテーマについては、時代のニーズ、支援先のニーズに応じて柔軟に対応していきます。次のテーマとしては事業承継にかかわる関係で選択肢として、スモールM&A仲介への本格的な取組みを検討しています。
- ―最後に若手診断士へのメッセージをお願いします。
- 若手診断士には、「顧客目線」を心掛けてもらいたいと思います。繰り返しになりますが、相手の能力や興味を見極めたうえで、実現可能性があることを提案してください。また、中小事業者は弱い立場に置かれているので、コンサルフィーに拘るだけではなく、公的支援や補助金制度を活用して、ぜひ、中小事業者のために汗をかいて欲しいと思います。
また、県協会や士会を活かして、キャリアアップを積んで欲しいとも思います。自分も独立間もない頃に、県協会で始まった金融連携PJに参加することで、実践の場を確保できました。加えて、保証協会の専門家登録も、県協会の推薦のお陰です。独立にあたって、県協会には大変お世話になったと感謝しています。
現在、コロナ禍にあって、診断士同士、診断士と支援先企業との間で対面でのコミュニケーションの機会が減りがちですが、若手診断士の方々には、人と人とのつながりを是非大切にしていただきたいと思います。
- ご自身の経験談から、独立前後の業務内容や、今、中小企業支援の現場で求められていることについて、語っていただきました。独立を予定されていらっしゃる方、独立して間もない方に参考になるアドバイスだったのではないでしょうか。
齋藤様には取材へのご協力に感謝を致しますとともに、今後とも、益々のご活躍を祈念しております。 - 【小川直樹】