神奈川工科大学講座講義報告『自ら考え、行動変容に繋がるキッカケ』
講義のゴール
工学部化学系の3年生に対する講義にあたり、大学工学部化学系を卒業し化学メーカーの工場で40年勤務した私の経験から下記を伝え、講義後の「生活」「学習」「就職活動」などを自ら考え、行動変容に繋がるキッカケ、気づきを与えることをゴールとした。
(1)日本の製造業の中での化学工業の重要性、将来に向けての可能性
(2)社会人として行動する際に意識して欲しい7つのポイント
(3)一人の人間として全人格的「コミュニケーション」の大切さ
講義の主な内容
日本の化学産業の強み
1)基幹素材を扱う化学産業の重要性
スマートフォン、車、衣服など、私たちが日常的に使用する製品はすべて化学素材を基盤として成り立っている。
しかし、消費者が接するBtoCメーカーは広く認知される一方で、最終製品の材料を供給するBtoBの化学メーカーは社会から見えにくい存在である。
自動車やタイヤのメーカーは知られていても、その原料となる合成ゴムや基礎化学物質を製造する企業の役割は一般にはほとんど認識されていない。
今回、ホルムズ海峡の緊張によりナフサ供給が注目されたように、化学薬品、化学製品は目立たないが重要な位置づけである。
2)化学産業の競争力と将来の発展性
化学の領域は原子レベルの基盤技術を扱うため、最終製品や製造方式が変化しても応用範囲が広く、事業を柔軟に拡大できる。
東レが繊維から炭素繊維へ、旭化成が肥料から電池材料へ展開したように、時代の要請に応じて成長分野へ転換できる点が特徴である。
一方、日本の製造業は「Japan as No.1」の時代ほどの優位性を保てず、電機・機械のような規模の経済で支配力が決まる領域では国際競争が厳しい。
これに対し、化学工業は知識集約型で、経験やすり合わせを重視する生産方式が日本の特性と合致しており、競争力を発揮しやすい。
AI時代の基盤となる半導体でも、前工程で使用される化学薬品の多くを日本企業が供給している。化学領域は日本が世界と戦えている数少ない製造業分野であり、半導体関連材料はその代表例である。
(2)生き残る企業の7つのポイント
1)富士フイルムの事業転換
講師在籍の富士フイルムは、化学系企業であり、アナログ⇒デジタルの変革期に、(1)で述べた大本の技術の力をもとに新たな領域でのビジネスに転換し存続できた代表的企業である。
事業転換について「アナログ写真のビジネスモデル」「富士フイルム第二の創業の3つの施策」「アンゾフの成長マトリックス」を用いた成長戦略、「写真と化粧品の技術的共通性」などについて説明した。
2)富士フイルムが生き残った7つの理由
講師自身が内側から見た観点で7つの観点でまとめた。
1.No.2だった
2.リーディングカンパニーを目指し続けた
3.全てを自前でやる文化
4.技術志向
5.変化に挑む強力なリーダーシップ
6.豊富な内部留保と金の生る木の存在
7.真摯に真面目に全力で取り組む風土
この観点で、具体例を挙げて解説をした。
特に、6.の内部留保は、バブル時代などに他企業が不動産投資や多角化を進める中で、来るデジタル化の危機に備え内部留保を積み上げ、2006年の「第二の創業」にて、バイオ医薬品など集中投資してM&Aを行った戦略性を講義した。
また内部留保は使えば終わるが、工場で生産しているような既存製品から生まれる利益が「金の生る木」となり新規投資のためのキャッシュを生む重要な役割になることを講義。
新規性や世間からの注目は低くとも、確実に利益を出す「工場」の位置づけを理解させた。
3)働くときに意識して欲しいこと
- コミュニケーションの大切さ
7つのポイントのうちの1~6は一般的な話として富士フイルム関連の書籍より学べる内容である。
ただ立派なビジネスモデルもそれに対応できる「現場」がないと実現できない。
7.の「真摯に真面目に全力で取り組む風土」について、講師の現場マネジメントの経験から「変革する現場」の作り方を説明。最も重要なのはモノよりもヒト、コミュニケーション。
特に変革の時代は「サーバント・コミュケーション」であり10の特性について例を挙げ紹介した。

受講された学生からのコメントや反応
印象に残った内容
4名から「コミュケーション」について言及され、人として社会生活を送る上で一番伝えたいことを挙げてもらったのはよかった。
受け身になるのではなく「自分自身が努力する事」にコメントしてくれた方が6名いた。自分事として講義の最後にそれで締めたのは狙い通りであった。
ID31:授業の最後に行ったコミュニケーションについての問いが印象に残っています。
今までは、コミュニケーションは言葉で行うものという認識が強かったのですが、授業で問われた問の選択肢には様々なコミュニケーションの種類があり驚いたからです。
ID36:特定の業界で生き残る企業ではなく、自分で生き残る企業にしていくといった言葉がとても刺さりました。
ハッとしました。





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