診断士インタビュー
多田敏浩
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診断士の匠「支援」より「相談員」として経営者に寄り添う
- 診断士として活躍する先輩から知恵や助言をいただく『診断士の匠』。今回は、総合リース会社を経て、現在は農業や不動産賃貸業と並行し診断士として活動する多田さんにお話を伺いました。
- プロフィール
- JA系総合リース会社にて中小・零細企業の経営実態や決算分析に携わる。
現在は独立し、30アールの農地での「農業」と「不動産賃貸業」を営む、 独自のポートフォリオを持つ診断士として活躍中。 - ■ 診断士になられた経緯と現在のお仕事について教えてください
- 前職での企業診断研修がきっかけです。実在企業を題材にした1週間の泊まり込み研修で講師が診断士でした。「こういう仕事があるのか」と興味を持ち、資格取得を志しました。現在は不動産賃貸を基盤に、農業と診断士業の「三本立て」で暮らしています。農業はトラクターも所有し本格的に取り組んでいます。診断士としては、前職を活かした農業・食品関連支援や、不動産業向けの専門家派遣、補助金申請支援などを行っています。
- ■ 診断士としての強みや専門領域について教えてください
- 自ら農業を営む「実務家」としての視点を活かした、農産・食品業界などへの支援です。この業界の商習慣に精通した診断士は意外と少なく、ニッチな領域だと感じています。資格の有無以上に、事業者としてリスクを負っている経験があるからこそ、同じ目線でアドバイスができることが、大きな差別化になっています。
- ■ 診断士として特に印象に残っているエピソードを教えてください
- 一つ目は事業計画作成支援でのことです。相手先担当者と議論を重ねながらサポートし、最後に社長向けのプレゼンを行った際、「社員より会社のことを分かってくれている」との言葉を頂き、経営者の想いを言語化できた手応えを感じました。二つ目は、営業推進に悩む社長との逸話です。「覚えてもらうには名刺があると良いですよ」と伝えると、次にお会いした際「人生初の名刺交換です。1枚目をもらってほしくて」と渡されました。社長の意識の変化が、具体的な行動として現れた瞬間でした。
- ■ 印象に残っている失敗談と、そこから得た教訓はありますか
- 社長への共感のつもりが、自分の経験談ばかり話してしまったことです。場は盛り上がったように見えましたが、振り返ると「自分だけが満足していた」と痛感しました。それ以来、「聞いているつもりで、話しすぎていないか」と意識的に立ち止まっています。話を乗っ取ってはいけません。診断士にとって大切なのは、知識を語ることではなく、相手の言葉を引き出し、整理することだと学びました。
- ■ 仕事の中で大切にしているモットーや考え方を教えてください
- 私は「支援」という言葉が好きではなく、自分を「相談員」と位置づけています。「支援」と言う言葉には、助けるという一方的な印象がある気がしてしまうのです。主体は経営者です。こちらが背中を押すのではなく、本人が「自分で歩いて行きたい」と思えるよう一緒に考える存在でありたいと思います。納得できる方向なら、無理に押さずとも自ら歩き出すはずです。動かないなら納得感不足か方向違いかもしれません。その「もやもや」をほどくのが診断士の役割です。
- ■ 若手診断士へのメッセージをお願いします
- 寄り添う気持ちがあれば、必ずしも話し上手でなくても務まります。現場で求められるのは「よく話を聞き、一緒に悩んでくれる人」です。また「診断士一本」をゴールにしなくてもよいと思います。私自身、不動産と農業があるからこそ、時間の切り売りにならず、納得できる案件を選べています。働き方や収入の柱も含め、自分なりのスタイルを考えてみてはいかがでしょうか。
- 多田さんのお話から、診断士以外の複数の収入の基盤を持つ余裕が、あえて「無理に背中を押さない」独自の伴走スタイルに繋がっていると感じました。「支援者」ではなく「相談員」として寄り添い、小さな一歩を共に喜ぶ。耳を傾け、相手の主体性を信じる姿勢こそが、長く診断士として活動するための土台になると学びました。
- 【飯島 利幸】