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『長期化するwithコロナに立ち向かう』第2回

~「中小企業に起きる変化」を読み解く~

同期会「令一会」では、アフターコロナ討議チームを立ち上げ、変化する姿に着目して、これまでとは異なる軌道の先にある未来の作り方を検討しました。その討議の内容をレポートにまとめさせていただきました。

令一会有志、アフターコロナ討議チームメンバーは、以下の8名です(50音順)
上原 航平、緒川 直樹、高木 富士夫、中嶋 宣行、福田 幸俊、升田 覚、増田 竜雄、宮原 崇

第1回目は「社会の変化」について述べました。第2回目は「中小企業に起きる変化」について述べます。

(1)対応を加速させるべきこれまでに起きていた変化

(執筆:上原航平)

今回の新型コロナウイルス感染症後の日本は、予測ができない革新が起きるのではなく、今まで起きていた様々な変化を加速させるのみと考えます。中小企業においても、今まで起きてきた変化を捉え、経営を変えていくことが必要です。

今後加速される今まで起きていた変化は下記のようなものが挙げられます。

①ICT利活用

ICTを利活用した業務改善は中小企業の長年の課題でした。情報を紙など物理的媒体でやりとりし印鑑で認証を行う方法では、従業員の出社が要求されます。こうした業務の進め方は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため人と人との接触を避けることが求められている中では、望ましくないものとなっています。

業務効率化や経営の改善を目的としてICTは導入されるものですが、新型コロナウイルス感染症対策を目的として、人と人の接触を抑え、物理的媒体による情報のやり取りを避けるためにも、中小企業におけるICT導入は進むと考えられます。

②働き方の変化

今までの日本企業は「場の共有」が働くことの前提になっており、そのために長時間労働や時間あたりの業務効率の悪い働き方などが見逃されてきました。働き方について中小企業においても残業規制が導入されるなど、課題として捉えられてきていましたが、新型コロナ感染症拡大防止のために課題解決が早まるものと考えます。

新型コロナ感染症により、半ば強制的にテレワークをせざるを得ず、業種によっては「場の共有」しなくても働くことができるようになりました。そうした際、働く意義が会社で時間を使うことではなく、業務を遂行し結果を出すことが重要になると考えます。

その結果、賃金・評価体系の見直しや、現在のメンバーシップ型に重きをおいた雇用体系から、ジョブ型雇用への転換などの変化が起こることが予測されます。

③シェアリングエコノミー・クラウドサービスの活性化

今回の新型コロナ感染症拡大のため、業務を縮小し大きく売上が減少すると見込まれるにも関わらず、かかってくる固定費は経営にとって大きな重荷となっています。こうした、予期せぬ事態が発生する場合は、資産を多く持つ経営よりも必要最小限しか持たず身軽に経営の方が持続可能であると言えます。

近年、ICTの発達により、シェアリングエコノミー・クラウドサービスといった、資産や資源をシェアして使用するときだけコストをかけて使用できるサービスが増えています。自社にとって本当に必要な資産以外は持たず、こうしたサービスを活用して経営を進めることで持続可能な経営を実践できるようになるのではないかと考えます。

サービスのニーズが増すことで、シェアリングエコノミー・クラウドサービスへの新規参入が起こり、経済が活性化することも予想されます。

(2)中小企業が取り組むべきビジネスモデルの変革

(執筆:小川直樹)

①安全・安心志向とオンライン化への対応

新型コロナウイルスの影響から、世の中に、「安全・安心志向」の考え方が広まると考えられます。企業においても、取引先を選ぶ際に、今まで以上に企業の知名度や信用力を気にするようになるため、信用や信頼のある企業に、新規取引や優秀な人材が集中することが予測されます。

従って、日頃から、自社の強み、自社の製品・サービスに関する情報発信を行うことによって、企業の知名度や信用力を高めておくことが、これまで以上に大事になります。

また、「オンライン化」が急激に進みます。従業員からは、オンラインツール(ビデオ会議、チャット会話など)を活用した在宅勤務環境の整備が求められようになり、取引先からも、オンラインで済む作業は、極力オンラインで済ませることが求められるようになります。

一方で、従来、大都市に事務所を構えることができなかった中小企業にとっては、オンラインツールを使いこなせれば、距離のハンデを超えて、地方からでも、ビジネスチャンスを拡大することができます。

②求められるビジネスモデルの変革

中小企業は、より一層、消費者や取引先企業のニーズをとらえて、そのニーズに合わせた企業メッセージを発信すること、コスト削減・生産性向上に結び付く業務改革を推進することが求められます。今までと同じ営業スタイルや業務の進め方では、Withコロナ、Afterコロナの競争に打ち勝つことができないかも知れません。

Withコロナでは、公的金融を活用した「資金繰り」対応が優先されますが、Afterコロナにおいては、営業・マーケティングの強化、生産性の向上などビジネスモデルの強化が課題になると想定します。

③アフターコロナの売上確保・販路拡大

Afterコロナにおける営業・マーケティングの強化のためには、取引先に対して、非対面・遠隔でサービスを提供するためのPC環境の整備、動画やSNSなどを積極的に活用した情報発信、クラウド型の業務システムの導入など、ITツールの活用がある程度、必要になります。

また、外出自粛が求められる中、実店舗からEC、又、リアルイベントからオンラインイベントへの移行、教育・研修のウェブセミナー化など、既に幅広い領域でビジネスのオンライン化が進んでいます。消費者心理としても、巣ごもり消費の期間が長く続くことが想定されることから、オンラインサービス利用の優先度が高まっていくことは明白です。

そこで、中小企業においても、従来の対面営業を前提とした営業手法から、オンラインを加えた営業手法への移行が必要になると考えます。取引先の大企業からも、非対面での営業対応が求められる機会が増えると想定されます。

一方で、グローバル展開している大手製造業においては、海外に展開していたサプライチェーンを見直し、部品調達先の国内回帰の動きが出てきています。このために、中小企業には新規取引のチャンスが生じています。ただし、このビジネスチャンスを活かすには、新たな生産設備・生産方式の導入などによって、生産性向上に努めて、大手製造業の要請に応えていく必要があります。

しかし、生産設備やITツールの導入に必要な資金の不足や、生産性向上やIT導入に関わる人材・ノウハウの不足から、新たな改革の一歩に踏み出せない中小企業が多いのが実態です。そこで、ものづくり補助金やIT導入補助金の申請から、生産性向上やIT導入の実行支援まで、中小企業に寄り添ってアドバイスやコンサルティングができる中小企業診断士を始めるとする専門家のサポートが必要になります。

④アフターコロナの人材の確保

新型コロナウイルスの影響により足下の人材需要は停滞していますが、アフターコロナを見据えて、優秀な人材を確保できるように、働き方改革を実現していくことが中小企業には求められます。目下、感染拡大抑止のためにリモートワーク環境の整備が急ピッチで進められています。

東京商工会議所が5月29日~6月5日に実施した調査によれば、リモートワークに取り組んでいる企業は、67.3%であり、前回調査(3月)と比較して、41.3ポイント増加しました。ただし、従業員300名以上で90.0%であったのに対して、従業員30名未満では45.0%に留まっています。

また、テレワークを実施した際に生じた課題については、「ネットワーク環境の整備」が56.7%で最多でした。そこで、中小企業においては、公的助成等を活用し、早急に、最低限の環境整備を進めることが望まれます。

⑤アフターコロナの事業承継・M&Aによる体制強化

新型コロナウイルスによる財務の悪化から廃業や事業売却に追い込まれる企業が増加することが予想されます。一方で、生き残った企業は、競争力を高めるためにM&Aへの取り組みを加速するチャンスであるとも言えます。実際、リーマンショックによる景気後退期(2008~2010年)にM&Aを実行し、その後、大きく成長した企業の事例が多くあります。

しかしながら、好況時よりも経営判断が難しい状況ですから、M&Aを行うには事前に、綿密な事業計画を立てる必要があります。その際も、事業承継やM&Aを専門にしている中小企業診断士をはじめとする専門家のサポートが助けになります。


第2回目は、中小企業に起きる変化、対応しなくてはいけない変化を述べてきました。最終回は、県西部で重要なホテル・旅館業と全国的に影響の大きい飲食業について、個別業界の変化とその対応策をまとめました。

以上

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