誰でも書ける経営革新計画のコツ

強みレポート
【筆者紹介】
須藤 弘幸(すどう ひろゆき)
2022年度資格取得、2022年度入会
公益財団法人東京都中小企業振興公社にて経営革新計画受付業務に携わり、約50社の審査申請業務を行って参りました。その経験から経営革新計画書作成におけるポイントをお伝えしたいと思います。

メールアドレス:sudo1218@gmail.com

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はじめに 

 今どうして経営革新計画作成を勧めるのか? 理由はアフターコロナ時代の中、顧客ニーズの多様化、変化が急速に進んでおります。そこで中小企業は既存事業を改めて見直し、強みを活かした新規事業を経営革新計画として作成、実行する事で、経営の向上と生き残りを図る事が求められています。また、漠然と日々経営を進めるのではなく、経営計画書として新たな目標づくりのきっかけとなります。事業承継時は後継者にとって新事業に積極的に取り組む決意表明の役割も果たします。経営革新計画の承認を得る事で社員間の結束強化や取引先拡大に役立てる事も可能となります。

計画承認による支援策は?

 経営革新計画を申請し、各都道府県別の審査会で承認がおりると日本政策金融公庫の特別利率による融資制度申込、信用保証の特例、中小企業投資育成株式会社からの投資申請等の施策が用意されています。中小企業診断士の支援としては各種補助金申請の加点目的もあります。

 また近年では外資系IT会社の高度人材採用、在留資格でのポイント加点を目的とした申請が増えてきました。国内のシステムエンジニア会社は優秀な人材確保が課題であり、システム開発下請けからの脱却を目指している企業が増えてきています。中には明確な新規ビジネスプランを作成する事で事業の停滞を打破したいという従来の目的を持った会社もいます。様々なきっかけや目的はありますが、事業計画を所轄の自治体から評価してもらい承認を得る事で計画策定の意義は多いにあると思います。

計画策定、承認までのプロセス

 経営革新計画は各都道府県による審査会によって承認が下ります。補助金のように審査会で不採択になることは滅多にありません。しかし事前に受付窓口に申請書を提出し、審査会に上程できる内容になるまで修正作業等のやりとりを何度も実施します。ここで申請書のポイントをおさえておかないと大量の修正作業が発生する事になります。

 実際に私も内容が解りづらい申請書は何度も経営者にフィードバックして修正依頼をしました。また経営者は受付機関の専門相談員との面接があり計画を明確に説明する事が求められます。ここでは我々診断士が策定支援する場合は、診断士主導でなく経営者の思いを優先し、ビジョンや目標を共有する事が必要となります。経営者自らが経営革新計画を自分達の会社ごととして腹落ちさせることが大事です。

これだけおさえれば誰でも書ける

 経営革新計画の審査会で重点的にチェックされるのは新規事業の「新規性」と「実現性」が具体的かつ簡潔明瞭に書かれているかです。「新規性」は製品、サービス、市場、顧客、収益モデル等で既存事業と新規事業の内容がどのように異なっているのか、新規事業は会社の経営課題を解決できる内容か、を問われます。また、新製品や新サービスの提供により当社や顧客、関連会社へのメリットは何かを明確にします。

 「実現性」は許認可取得状況、会社の組織体制、連携先の有無、収益計画と算出根拠の妥当性、他社との優位性、資金調達先との交渉状況、実施計画時期の妥当性、設備投資計画、運転資金計画の妥当性などがあります。申請書修正案件の中には新事業が既存事業の売上を押し上げるだけの施策である、実現性で算出根拠や他社との優位性が不明瞭な計画が多く見られます。計画の申請時では受付機関の専門相談員との面接が実施されます。そこで、「これ本当に売れるの?」「こんなに誰が買うの?」と突っ込まれないよう具体性、妥当性を持たせる必要があります。

 またあまり緻密過ぎても審査員に伝わりづらいので、何が新しいのか?どうやって実現できるのか?を簡潔明瞭に伝えられる内容に整理していく事がポイントになります。申請書作成は約30ページとボリュームもあり申請支援もハードになります。ですが各ページで上記の内容を網羅していれば、あとは相談員との微修正で申請準備まではできると思います。

おわりに

 大企業でも中小企業でも新製品、新サービスの計画、提供は事業継続には欠かせないことです。経営革新計画は中小企業にはあまり知られてはいませんが、「いつまでに何をやるべきかの指針になる」「中長期的な視点で課題に対して取り組める」「スタッフの役割分担や目標が立てやすい」といったメリットがあります。

 実際私も何度も修正して苦労して作成した計画書の審査承認がおりると経営者から「今回の承認で会社の進むべき道が明確になった」「社内で共有することで社員のモチベーション向上に繋がった」など歓びの声を沢山頂きました。

 是非、中小企業経営者に経営革新計画策定をお勧めしてみてください。
何かご相談、お問い合わせ等がございましたらご連絡をお待ちしております。
以上

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