流通・サービス業をホームグラウンドとして

強みレポート
【筆者紹介】
須藤和夫(すどうかずお)、診断士資格取得及び神奈川県入会年度2016年。
日米合弁企業、米国企業の本社、日本企業で事業企画・開発・マーケティングの責任者を歴任し、定年退職後、診断士として独立しました。
メールアドレス: kazuo.sudo@mx2.ttcn.ne.jp

須藤和夫

はじめに 

 私は、流通業・サービス業を自分のホームグラウンドと思っています。
と言っても、上記のようにその業界での勤務経験は全くありません。 しかしPOS業界の世界トップメーカーで勤務し、その立場から業界を見させていただき、日本及び世界の主要流通・サービス業の方々とも仕事を通じてご縁を持つことができ、時にはコンサル的な仕事をしてきたのがそう言える理由です。

診断士から見た流通業・サービス業の特徴

 流通業・サービス業はほとんどの場合BtoCの事業です。 という事は、我々はCの立場でも支援先企業を見ることができる、いや、見なければいけないという事です。
 そのため、私は必ず店を先に見ます。 そこでは診断士としてプロの目で見るのは当然ですが、消費者の立場で見ることも非常に大事です。
 無論、複数店を見たり、競合相手の店舗を見たりすることも良くあります。店舗では実際に買う必要はないですが、何かを買おうと思うだけでも店の展示方法や品ぞろえが気になることがあります。 これが消費者の目です。 飲食店の場合は食べてみることが多いですが、グルメ評論家ではないので、味ではなくオペレ―ションの面を中心にみています。
 これが自由にできることはこの業界の特徴で、例えば製造業で競合の工場を見ることなどはできないでしょう。

流通業・サービス業はバリエーションが大きい

 一口に流通業と言っても商品の特性(在庫の持てるもの、生鮮品のように売り切らないといけない物)、在庫の持ち方(買取、委託、返品の可不可など)、売り方(販売員が対面で売るか、チェックアウト型かECかなど)、チェーン店(直営、FC、VCなど)か単独店かなどで全く異なります。また、サービス業の場合はサービスの内容でさらにいろいろな「目付」のポイントが異なります。

流通業・サービス業の「目付」のポイント

 では流通業・サービス業の経営支援をするときどこに目をつけるか。 無論、財務分析やSWOT分析などから始めても良いですが、何をやってもほとんどの結論は「売上利益を増やしましょう」になります。
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 そう言って終わってしまえば楽ですが、それでは役に立たないのでそこに進む方法を示すことになります。右上図はそのための基本形で、私もこの変化形を良く使います。当然ですが、大事なのは具体的対策です。この部分がプロとしての我々の仕事場になるわけです。

「目付」の例

 例えば店舗売上を増やすというテーマでは、右の式を使います。
その中の顧客数を増やすというテーマでは、HPやSNSの活用が考えられます。 それは正しいのですが、実はもっとアナログな対応が効果的なことも多くあります。
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 一例をあげると、店に入る潜在客を逃しているケースが結構あります。 そういう店は、入りにくかったり見つけにくかったりするのですが、長年営業している経営者は気付いていないことが多いのです。 やや高級な飲食店の例ですが、入口が人通りの多い表の通りから引っ込んでいて、しかも看板も奥にありました。 いかにも高そうな店なので、これでは一見の客は怖くてはいれません。 店の品格を落とさないように気を付けて看板を移動させ、お品書きを表に出すだけで客数が増えました。
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 左の写真は婦人衣料品店です。 何かが足りないことに気づきませんか。 実は足りないのはマネキンです。 正確には無いわけではなく店内に引っ込んでいるので見えないのです。
  また、マネキンはただの衣類ハンガーではありません。 その店が一番売り物にしたいコーディネーション(世界観とも言います)を一目で表すものです。 この店の場合は、マネキンを前に出し、経営者が考えるコーディネーションを見せることで来店率が上がりました。
 さて、一旦店に入った顧客を逃さない、即ち、購買率を上げる、ためにはこれもアナログですが、接客8大用語が自然にちゃんと使われているか、は大きなポイントですし、物販店でも飲食店でも自分が見て選びやすく買いやすいPOP(飲食店ではメニューも)があるかというのも同じです。
 また、既存顧客からの売り上げを確保して離反顧客を減らすためには顧客管理が必要になります。 経営者が自社の顧客をどのくらい知っているか、は重要なポイントです。
 私はこういう様な消費者の目とプロの目を使い分けてアナログのポイントと、数値データを使ったポイントを経営者とじっくり話し合い、対策を練り上げるように心がけています。

「目付の視力」を上げる為に

 前に書いたように我々はこの業界とは消費者としても縁があるわけです。 ですから、いろいろなセミナーで知識を蓄えることも大事ですが、新しい業態の店、評判のいいショッピングセンターやレストランが出来たら、まず、職業的好奇心で行ってみる。そこではプロの目に加えて消費者の目で観察してみるという事は大事だと思っています。

おわりに

 41年間の会社勤務の中で10年間は米国企業の本社所属で米国での勤務も経験しました。その前後も、米国を中心とする世界各地の取引先や顧客とビジネスで関係を持つ経験をしましたので、診断士としても、その経験を活用したいと思っています。
以上

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