強みレポート

中小零細企業の「賃上げ」に関して
~診断士としてやれること~

筆者紹介
赤津 雅彦(あかつ まさひこ)
平成2年神奈川県中小企業診断協会登録
30年以上にわたり、中小企業の賃金制度再構築支援に関わる。現在、株式会社賃金システム研究所® 所長、プラチナ企業育成マイスター® 
GRP®(グローバル報酬プロ)、MBA資格保持
https://www.paysystem.co.jp
https://www.akatsu.org/akatsu-updated.htm
メールアドレス:akatsu@myad.jp
著書:「賃金システム再構築マニュアル~DKモデル®~」(電子書籍、amazon等)」
「赤津雅彦の人事・賃金相談Q&A~DKモデル®による社内システムの活性化~」
「私の履歴書~古希編~」他多数。「賃金 赤津」で検索!
参考動画はコチラをクリック
https://youtu.be/hB6qZ4gxv3w

はじめに

 私はメーカー(宝HD)勤務、国内10年、海外(現地法人設立、労務管理、販売管理)7年を経て、1988年に現在のコンサル会社(賃金システム研究所®)に転職し、1990年(平成2年)に中小企業診断士登録。中小零細企業の賃金制度づくりを中心に、賃金改革とそれに付随した人材活用の仕組みづくりを行ってきました。関与件数は、神奈川県下の企業を中心に1300超。本稿では、昨今話題に上がる「賃上げ」に関して、筆者がどのような姿勢で中小企業に寄り添い、賃上げができる体質の企業に育てたか、賃金システム研究所®独自のノウハウを含めてお話致します。

ちまたにある賃金の専門書の多くは、中小零細企業にはあまり・・・

 「賃金」をキーワードに検索しますと、(中小企業向けで無い)賃金制度の本がたくさん抽出されます。面倒くさそうな数式や数字の羅列のような表、上から目線で「○○すべし」的な、内容がほとんどです。「本当にこれを実行できるのか?」と思いたくなるような本も多々あるのが実状です。
これらは「積ん読」の飾りにはなりますが、中小零細企業のオーナー経営者には残念ながら共感されません。確かに従業員数が10名規模になると「就業規則」を用意しなくてはなりませんが、仮に立派な就業規則ができたとしても使えなければ、絵に描いた餅なのです。

「賃金制度」は社長の頭の中に

 これまで数多くの企業経営者(多くが創業から10年)と面談した経験から、「自社の賃金制度のおおまかな構想は経営者の頭の中にすでにある」ということがいえます。ですから、経営者と最初に対面する際には、「社長は将来、この会社をどのようにしたいのか」、「そのための人材に対して一番大事なことは何か」、「社員を将来どのように処遇したいのか」等、社長の頭の中にある賃金制度の枠組みを丁寧に聞き出します。大抵の場合、すでに社長には賃金に対する考え方があるものです。が、それを具体化できていないのです。

賃上げは、格付の向上とともに

「賃上げ」とは、その社員の実績と、これまで支払っていた賃金水準との「隔たりを埋める」ことです。それを後押しできるのが「DKモデル®」というビジネスモデルで、Dはダイナミック(環境適応)。Kは階層型(賃金の基本は適正な賃金水準)を体系化した制度という意味です

まずは社長の思いを傾聴

 これまでこうした企業で経営者と何度も面談をしたあとに、シンプルな賃金制度を提案し、自画自賛となりますが、なんと10社中9社にこの仕組み(DKモデル®)を導入していただきました。経営者は何も最初から「賃金はコストだから少ないほど良い」とは考えていません。ほとんどの経営者は、できれば少しでも社員の賃金を上げてあげたいと思っているのです。

賃金制度を見える化する、シンプルな「DKモデル®」

 そのためには、社内での社員の位置づけ(人材価値の格付)を客観的に見える化し、どのような仕事をしたらどのように位置づけるかを決めてもらいやすい「仕組み」を提案します。
つまり、「社内の賃金相場表」を作ることこそが、賃上げできる環境づくりの始まりなのです。現在よりも高い仕事をすれば(つまり会社の生産性が上がれば)社員の格付が変わる(上がる)、ということをできる限りシンプルにルール化します。そうすれば、企業にもそれに見合った賃金水準を支給する余裕ができてきます。

神奈川県の賃金相場は依然として年功ベース

 日本の賃金水準は地域ごとに、同業者でそれぞれ形成されています。同業者といっても欧米のような職務ことの横断的な賃金相場はまだ入手しづらく、ほとんどが年齢や学歴ベースの賃金相場です。年功的な賃金相場の慣習は誰かが改善すべきで、現場を熟知している中小企業診断士こそやらなければならない責務と考えます。

社内で通用する社内賃金相場を

ですから少なくとも社内では、社員が担当する仕事のレベルと評価のレベルを「階層化」して格付し、その格付に相当する「賃金水準」(多くは月例賃金)を以下のように明示することから始めることです。こうした表を作成し社長と面談を深めることで、その企業独自の賃金制度ができてきます。社員の一人ひとりの目標が明確になり、人も企業も活き活きとし始めます。まずは、こうしたインフラを経営者と一緒につくることから始めることです。下の表は「「社内賃金相場」でもあり「人材マップ」の例です。
引用:「横浜市の某企業で導入した社内賃金相場の例」

おわりに

 ここ数年、私は後継者育成を使命と感じ、DKモデル®の考え方や具体的な構築方法等を洗いざらい教えています。企業経営者のみならず、志の高い全国の中小企業診断士、社会保険労務士、税理士が、賃金システム研究会®会員(「赤津塾・塾生」)として切磋琢磨し、「DKモデル賃金アドバイザー®」資格取得をめざしています。読者のあなたも仲間になりませんか。日本をもっとかっこ良くしたいという気概のある方は大歓迎です。詳しくは→ https://www.dk-model.com

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