効率的な技術開発と製品設計!
~2段階設計で設計品質を上げて損失を防ぐ~

強みレポート
筆者紹介
三橋利彦(みつはしとしひこ)、
2020年5月中小企業診断士登録(登録番号420430)、同年7月神奈川県中小企業診断協会入会。
1990年 事務機器メーカーに入社以来、技術者として技術開発・設計部門に所属。
メールアドレス:toshihiko.mitsuhashi.4n@gmail.com
みつはし

はじめに 

 私は1990年に事務機器メーカーに技術者として入社しました。それ以来、技術開発、製品設計を行ってきました。そのなかで、最も悩まされてきたことが、生産開始間際の品質トラブルや製造/組み立て工程での不良です。製造現場で不具合や不良を対策すると、ラインでの出荷検査や手直し・調整が発生してしまいます。その結果、製造経費が大きくなり、会社に損失をもたらします。「品質不良で製品が出荷できない」などあれば、営業活動にも影響を与え、売上未達などの経営問題を発生させます。会社経営に大きな影響を与える品質トラブルを無くす方法を紹介し、最後に技術開発や製品設計を成功に導くためのる解決策/サービスをお伝えします。

一般的な設計法

 一般的に、製品設計の段階で、以下のプロセスを繰り返し行います。
1) 目標を満たす製品を設計し、試作する。
2) 試作品に対して、ノイズ(環境負荷、機械的負荷、化学的負荷)を与えて、試験を実施する。
3) 発生した不具合の対策を検討し、設計変更を加える。
しかし、繰り返しチューニングして設計品質を合わせ込んでも、品質トラブルの発生を防ぎ切れません。別の方法が必要になります。それが、以下に説明する品質工学を活用した設計法となります。

2段階設計法

 品質トラブルの発生を防ぐ品質工学を活用した設計方法は、数多く提案されています。基本的には、ここで説明する2段階設計法になります。それは、設計ステップを2つに分けて、
1) ノイズに強い設計定数を抽出する。
2) 目標値に調整する。
図1
 とします。そしてこの一連のプロセスを一回だけ行えば製品品質は安定し品質トラブルを防ぐことができます。図に示す的に当たった弾痕の絵は2段階設計を模式的に現したものになります。弾痕のバラツキを小さくして、目標に合わせ込むというものです。さらに、設計プロセスを繰り返し行うことが必要ないので、開発設計期間の短縮になります。以下各段階について説明します。

ノイズに強い設計定数を抽出する

 設計定数を振った複数の試作品に対して機能試験を行います。機能試験を実施する際は、直交表に設計定数と水準を割り付けた実験計画を立案します。この直交表を活用した機能試験の結果を解析し、各設計定数のノイズに対する強さ(SN比・安定性)と感度を確認します。そして、ノイズに強い(SN比の大きい)設計定数と水準を抽出します。SN比の大きい設計定数の水準を製品のパラメータとして選択することで品質が安定した製品を設計できます。

目標値に調整する

最後に、残りの設計定数の水準を使って、製品機能を目標値に調整していきます。すでにこの段階で製品品質は安定しています。以上の2段階の設計ステップで製品品質は安定することになります。

おわりに

 品質工学を使った製品の安定化設計のステップは細かく、次の項目順で進めることになります。
1)製品機能と品質の関係の明確化、2)機能と品質の制御要因とノイズ要因の特定、
3)実験計画立案とテスト実施、4)感度とSN比の計算、
5)最適水準の選定と確認実験
「製品機能と品質の関係」、「制御要因とノイズ要因」に間違いがあると、これらステップはすべて無駄になり、品質安定化は失敗します。安定化設計を成功に導くには、製品機能と品質に対する理解が必須です。製品機能と品質を理解するには、場数(経験とノウハウ蓄積)がどうしても必要になります。30年間、数々の失敗を重ねてきた私の経験を踏まえて、技術開発や新製品設計を成功に導く秘訣を伝授できると考えています。
また、技術開発や製品設計はチーム活動となります。全メンバーが製品の機能と品質を理解することが必要であり、そのためには1)人材育成、2)ノウハウ蓄積と活用の推進活動が必要です。
推進活動は、通り一遍なものではなく、各企業の実情に合わせたものでなくてはなりません。企業の実情を正しく理解し、まず何から始めればよいかを、私はお伝えできると考えています。

参考文献:品質工学入門 矢野宏 日本規格協会
入門タグチメソッド 立林和夫 日科技連

以上

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