神奈川だから活かせた建設特化の経営戦略

強みレポート
筆者紹介
加藤仁史(かとうひとし)
診断士資格取得年度:2008年
神奈川県入会年度:平21会
自己紹介:2010年に創業し、2016年に法人設立。それまで勤めていた建設会社やシステム開発会社、経営コンサル会社の経験を活かした形で、経営コンサルタントとしての支援スタイルを構築してきました。
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はじめに 

 経営コンサルタントとして独立して13年目になります。独立当初から受注ルートがあった訳ではなく、手探りで開拓してきました。中小企業診断士として自分が置かれた経営環境に対し、会社員時代の経験という経営資源を活かした事業戦略で取り組んでいます。

建設特化のポリシー

 当社の経営理念は『建設会社の事業を伸ばすシステム経営』で、名刺の表面にも記しています。図は事業ドメインを表現するためにデザイナーに作成してもらったものですが、こちらも名刺の裏面に載せています。名刺交換時に説明することはほとんどありませんが、自分の戦略を見失わないためにも有効なシンボルマークです。
        出典:事業ドメインとして筆者作成→
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 支援する業種を建設業に特化するきっかけは、先輩診断士の一言でした。「社会人になったときの最初の職業が最も興味がある業種である」「建設業を専門としている診断士は(当時は)ほとんどいない」というものです。独立を間近に控えた頃、お手伝いした診断協会の引っ越しの帰り道に経営方針を固めました。

特化によるメリット

 建設業に特化することで得られるメリットは、①支援機関(金融機関や商工会議所など)が建設会社の支援が必要な時に当方を思い出してくれる、②支援を経験した業種ばかりのため事前研究などの準備は不要になる、③建設会社ばかりで月に40社近くの相談に乗るため、最新で他社事例を豊富に持つことができる、④建設業界の最新情報や特殊な情報なども知り得る機会が増える、などなど。中小企業の経営者に他社事例を伝えると間違いなく喜ばれます。建設業界以外については疎いままということになりかねませんが、経営支援する上ではメリットの方が勝っていると感じています。
 実際の事例として、埼玉県で支援を始めたばかりの土木会社についてご紹介します。地域自治体から公共工事を受注している会社ですが、自治体に原因がある現場のトラブルが2件続き、業績が急激に悪化しました。幸いなことに、金融支援は得られ、事業再構築補助金でICT施工※の設備が整ったので、差別化を図りながら改善の方向性が見えてきました。建設業に特化して、研究会などでもICTの知識を得ていたことで、適切なアドバイスを行うことができました。
※ICT施工:建設工事の生産プロセス(調査・設計・施工・監督・検査・維持管理)において、ICT(情報通信技術)を使って生産性を向上する施工システム

神奈川だからこそ有効な戦略

 競合が少ない建設特化という戦略ですが、神奈川県だからこそ成功したと思っています(神奈川県に限らず、関東近県でも同様)。その理由は、「支援を必要としている企業が多い一方で、支援できる診断士も多い地域のため、専門性が高い方が選ばれる」ためです。診断士が少ない地域(地方の道県など)であったならば、求められるのはどんな会社でも助言できる専門家になると思います。そういった地域で建設特化という戦略を取っていたら、恐らく受注に困っていたことでしょう。外部環境に合わせて戦略を変えるという診断士にとっては当たり前のことですが、セオリー通りの戦略が効果をもたらしました。

おわりに

 神奈川県や東京都の建設会社を支援することが多いですが、対象エリアは日本全国としています。これまで、北は青森県から西は宮崎県まで、多数の都府県で支援してきました。また、長野県の建設会社は支援開始から8年を超えていますし、最も長い支援先は10年を超えました。これからも、経営支援を必要としている建設会社のために、日本全国を駆け巡りたいと思っています。

以上

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