診断士資格を海外ビジネスに活かす
~日本企業と外国企業の経営支援の経験を語る~

強みレポート
筆者紹介
山田昭彦(やまだ あきひこ)
2007年診断士資格取得、2018年に神奈川県中小企業診断協会に入会。
伝動機器メーカに33年間勤務し、マーケティング、総務、貿易、製造、技術などに従事。2011年JICAシニアボランティア、2014年からJICA中小企業海外展開支援事業に参加し、2019年からは外国人経営者向けのセミナー講師を務めています。
メールアドレス:kikunayamada@h3.dion.ne.jp
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はじめに 

 若い診断士のみなさまの中にはグローバルな診断士活動に従事したいと思いつつも、そのためのスキルや経験の不足に不安を感じたり、活動の方法がわからないと悩む方が大勢いると思います。わたしもそうでした。会社員時代には貿易に関わっておりましたが、対象は先進国であって、自分が希望する途上国での経営支援となると話は別で、きっかけを作るのに苦労しました。
 現在でこそ海外展開支援、外国企業の診断や外国人経営者のためのセミナー講師を務めるなど活動の幅が広がりましたが、きっかけは中小企業診断士の資格と経験です。今回は日本企業の海外展開支援と外国企業の経営診断に的を絞って経緯を紹介いたします。

日系企業の経営支援

 日本企業の海外展開支援では、JICA国際協力機構の期限付き嘱託として、ベトナムではハノイとホーチミンで日本企業の現地フィージビリティスタディに同行してパートナーの紹介や現地サイトの視察を行い、日本では神奈川県と山梨県でJICAの海外展開支援事業に応募を検討している企業を訪問して支援事業を説明し応募を手助けしました。
 JICAのスタッフになるための審査で一番役立ったのは診断士の資格でした。JICAは中小企業の海外展開を支援するミッションを掲げているものの、中小企業を知る人材には不足していますので、多くの診断士が採用され国内外で活躍しています。入構審査では診断士こそが中小企業のよき理解者であることを強くアピールし、現場では診断士試験や企業診断で学んだ知識や経験を思い出して、活用してきました。多くの事例に接してきたので、多様な業種の支援に対応ができました。

外国企業の経営支援

 外国企業の経営支援では、青年海外協力隊に加わり、中東のヨルダン王国でペイント製造、ソーラーパネル製造などの8社を訪問して診断とアドバイスを行いました。青年海外協力隊の審査でも中小企業診断士資格がモノを言いました。また、現場では得意とする生産管理のみならず総務や人事など幅広い対応が必要で、ここでも診断士の勉強が役に立ちました。
 例えば、給与規定のない企業に規定作成を依頼された時には、昇進昇格の評価と給与の連動を思い出しながら奮闘しました。経営の基本を押さえることで、どこでも通用すると自信も湧いてきました。

経験からの学び

 ヨルダンは日本とは気候・風土・人種・宗教・言語などが大きく違う中で生活しビジネスを行うには「好奇心」でもって楽しむことと、環境に違いを乗り越える「忍耐力」が重要です。また、診断士として企業の夢の実現をサポートするという気もちを強く持つように心がけました。例として、途上国の経営者は欧米から学ぶことに熱心で、例えば「シックスシグマ」をやりたいと、工場の現実から見てかなり無茶な依頼を受けることがあります。その場合でも話をじっくりと聞いたうえで、「シックスシグマ」が日本のQCの影響下にあったことを説明し、5Sからの改善を納得していただきました。
 語学については、グローバルな環境では英語が役立ちますが、中小企業をサポートするには現地言語を理解することはコミュニケーションの形成には重要です。机上で勉強する外国語はあまり役に立ちません。現地での生活や仕事の中で勉強して、最小限の文章で気持ちをしっかりと伝えることを心掛けました。ただ、JICAの審査に通るためにはTOEICで規定の点数以上を取ることが求められ、これをパスするために頑張った時期もありました。
 こうした経験はいまでこそ簡単に語っていますが、当時はひやひやもので、わたしはこうした経験から学んできました。

おわりに

 このメルマガでは海外での経験の一部のみをお伝えはしています。思い返すと、巨大な自動化された白物家電の工場であちこちのラインで生じるシャットダウンに遭遇して頭を抱えたこともありました。伝えたいことは山ほどあります。JICA活動やベトナム、ヨルダンについて話を希望される方は上記のメイルを通じてお尋ねください。できるだけ対応させていただきます。

以上

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