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(連載企画)ベネフィットコーポレーションについて(第2回)

 前号ではベネフィットコーポレーションとは何か、生まれたきっかけなどをご紹介しました。今号では米国でベネフィットコーポレーションはどれくらい設立されているのか、どのようなベネフィットコーポレーションが投資対象になっているのかを概観したうえで、ベネフィットコーポレーションという法制度の背景にある考えの一部をご紹介します。

1.米国でのベネフィットコーポレーションの設立割合と投資対象上位企業

 州別の設立割合とデラウェア州のベネフィットコーポレーションに対する分野別投資額を以下に示します

出典 内閣官房 新しい資本主義実現会議 第6回会議資料

 上記をみるとオレゴン、ニューヨーク、ネバダでは、2010~2017年の間に、新規にベネフィットコーポレーションとして設立、または既存会社形態からベネフィットコーポレーションに移行した会社が20%程度であることが分かります。また、投資対象として金融、教育、芸術、食品などの分野のベネフィットコーポレーションに資金が集まっていることも分かります。
 ベネフィットコーポレーションは株主利益最大化をめざす会社ではありません。したがって、デラウェア州でベネフィットコーポレーションに投資している人や組織は、環境問題や貧困撲滅などに関心がある、いわゆる「意識が高い」投資家と思いがちですが、実際には下表のように利益追求型の投資家も投資していることは興味深い点です。

2.ベネフィットコーポレーションの背景にあるもの

日本でもベネフィットコーポレーションという新たな法人形態のための法制度が必要かどうか、2023年までに「新しい資本主義実現会議」の場で検討されることになりました。
 今年4月に新しい資本主義実現会議にベネフィットコーポレーションという法制度が提示された際には、「米国の制度を換骨奪胎しただけで新しさはない」「定款に公益貢献を謳えばすむ話。エーザイやユーグレナをみればそれがわかる」、仏国の「使命を果たす会社」の業績低迷を指摘(具体的にはダノンを指していたようです)するなど否定的意見が多かったように感じます。

 この法制度が日本で採用されるかどうかは分かりませんが、ベネフィットコーポレーションの背景には「会社は誰のものか」という古典的だが新しい問いがあることを理解しておくと、今後の議論をおもしろく聞くことができるかも知れません。
 米国のベネフィットコーポレーションの模範法(いわば法律のひな形です)は、株式会社の所有者は株主であることを認めています。しかし、そこで想定している株主は、自己のキャピタルゲインやインカムゲインを最大化する株主ではありません。そこで想定している株主は、企業の社会的責任(CSR)を自覚し、その遂行による社会的価値の創出からの自己の利益を得ようとする株主です。乱暴ですが分かりやすい言い方をすると、模範法は最初から株主への利益配分を抑制するという設計になっています。「会社は誰のものか」という問いに当てはめれば、何が何でも利益極大化を志向する株主ではなく、CSRコストを自ら負担して社会に貢献する中から利益を得ようとする、日本的に言えば、社会貢献への志が高く控えめな株主のもの、ということになると思います。

3.おわりに

 行政が財源不足などで相対的に力を喪失しつつある一方、社会課題は増大するばかりです。企業の力で社会課題を解決しようとする流れは今後も一層強まると思われます。中小企業がこの機会をうまく捉えることができればビジネスチャンスが広がるとともに、何のために経営しているのかという、実際にはなおざりになりがちな部分について考えを深める好機になるかも知れません。

参考資料1.内閣官房 新しい資本主義実現会議 第6回資料
参考資料2.鈴木由紀子「ベネフィット・コポーレーションの展開と課題」『商学研究』33号
参考資料3.高岡伸行他「ベネフィット・コーポレーションの制度設計思想とそのサスティナビリティ・マネジメントへの影響」『日本経営倫理学会誌』第24号


【関澤 充】

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