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中小事業者の価格転嫁のリアル ~強靭なサプライチェーンの構築へ向けて~
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重田 義人(しげた よしと)令和6年度 中小企業診断士登録、神奈川県中小企業診断協会入会 自動車業界をさまよう企業内診断士。業務は一貫して調達・購買分野において外部調達品の安定調達、コスト適正化、取引先支援等に従事。モノづくりの現場改善活動から調達戦略、BCP、経営戦略の策定など製造業の困りごとを幅広いレイヤーでご支援。 メールアドレス:yoshito.shigeta@anpapa-office.com
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はじめに
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皆さん、こんにちは。前回の2025年11月にメルマガを寄稿させていただいた際には、令和8年1月1日から施行された改正下請法(取適法)に関して書かせて頂きました。今回は前回のメルマガでも少し触れた点ではありますが、改正下請法(取適法)の目的の一つである中小受託事業者による価格転嫁の状況に関して書かせて頂きたいと思います。ここでは改正内容の詳細には触れませんが、昨今の物価上昇に対応するためコスト上昇の速やかな価格転嫁による中小事業者の賃上げの原資の確保が改正下請法(取適法)の大きな目的の一つとなっています。
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一方で改正の目的の通り中小事業者の価格転嫁は進んでいるのでしょうか?ここでは統計資料から読み取れる価格転嫁の状況を確認すると同時に、筆者が自動車業界で日々調達業務に関わっている現場目線から見た中小事業者の価格転嫁の課題についても述べたいと思います。
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価格交渉促進月間のフォローアップ調査結果
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2021年9月より、経済産業省が主導して毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」として設定をしています。これは昨今の原材料価格やエネルギー価格、労務費等の上昇分を、中小受託事業者が適切に取引先に価格が転嫁できるよう、発注側企業と受注側企業の価格交渉の促進を目的としたものです。また、この年2回の価格交渉促進月間のフォローアップ調査結果も公表されております。
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このメルマガを執筆しているタイミングでの直近のフォローアップ調査結果としては2025年9月度の調査結果となります。主な調査結果の数値を以下に記載します。
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・価格交渉が行われた割合 89.4% ・全体の価格転嫁率 53.5% (内訳 原材料:55.0% 労務費:50.0% エネルギー費:48.9%) *価格転嫁率とはコスト上昇に対する実際の価格引き上げの額の割合 *調査対象は約30万社
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さて、ここではこの「価格転嫁率」に注目したいと思います。皆さんは今回の全体の価格転嫁率53.5%という数字をどう感じられるでしょうか?思ったより高い?または低いでしょうか?
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以下に、2022年からの全産業における価格転嫁率の推移をグラフで示します。 直近での価格転嫁率がようやく50.0%を超えてきていますが、逆の意味では半分しか価格転嫁ができておらず中小受託事業者の収益をまだまだ圧迫している状況が続いていると見て取ることもできるかと思います。
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また、フォローアップ調査では以下のような傾向も明らかになっています。 ・価格転嫁率の構造的課題(1次請け:54.7% 4次請け以降:42.1%) ・業種間格差(化学・機械製造分野などが改善傾向に対してトラックなど運送分野では悪化)
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全業種では徐々に価格転嫁率は改善傾向ではありますが、多重下請構造により取引階層が深い中小受託事業者ほど価格転嫁が進んでいない構造的な問題や、価格転嫁が進んでいる分野と悪化している分野の格差が広がっている実態も報告されています。
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価格転嫁交渉の現場から
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前項でご紹介した通り、「価格交渉が行われた割合」が89.4%という数字が示すように価格転嫁交渉が行われる点においては以前より浸透してきていると感じます。但し、時折、取適法違反のニュースが世間を賑わせている事実を鑑みればまだまだ十分ではないともいえるのかもしれません。
また、価格転嫁が進まない要因の一つに、私の経験から中小受託事業者の原価管理に関する課題が挙げられると考えています。どの分野でも共通の課題だと思いますが、自社の製品やサービスの原価を把握していくことは企業経営や製品戦略の観点からも重要なポイントです。原材料費、労務費、エネルギー費などの動向を客観的に示している指標は多く出回っています。それらの指標を活用しながら自社の製品やサービスの価格転嫁額の妥当性や透明性を発注側企業と論理的に行なっていくことが、中小受託企業が価格転嫁を進めていく上での最大の課題であり、これを実施していくには常日頃から自社の製品・サービスの原価管理をしっかりと行なっていくことが求められます。
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原価管理は手間と人手が必要になる反面、すぐに売上や収益向上に繋がるものではありません。但し、原材料費や労務費、エネルギー費は今後も変動していくことが予測されます。これらの費用変動をタイムリーに価格転嫁を進めていく上では常日頃の原価管理は必須な情報となってきます。私は、原価管理と公になっている客観的な指標を活用した価格転嫁を理論的に進めることが中小受託事業者の価格転嫁を進める王道だと考えています。
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中小企業診断士が貢献できる課題解決
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価格転嫁に関しては、多くの自治体や商工会議所などで伴走支援や相談窓口を設けて中小受託事業者の支援を実施しております。この分野においては中小企業診断士も支援できる多くのメニューがあると考えます。
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足元ではコスト上昇分の価格転嫁を進めることで中小受託事業者の賃上げの原資を確保することが喫緊の課題になるかと思います。一方で中長期的な観点で見ると多重下請の解消、自社製品やサービスの差別化や高付加価値化による価格転嫁の検討も必要になってくるポイントだと考えます。価格交渉力を持つためにはM&Aなどを通じた企業規模の拡大なども視野に入れる必要があるでしょう。これらの視点から見ると短期的には、原価管理や価格転嫁戦略の策定支援、中長期的には経営戦略や製品戦略の策定支援、M&A支援など多岐に渡って中小企業診断士が支援できるメニューやニーズが存在していると思っております。
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おわりに
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中小受託事業者と発注側の価格転嫁交渉は強靭なサプライチェーンを維持する上で必要なことです。一方で価格転嫁が一時的な事象で終わるのであれば単なる値上げ交渉でしかありません。主な市場が海外である製品やサービスであれば海外市場における相対的な価格競争力の低下で終わることになります。
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私は、理想的には、今回の価格転嫁が進むことがサプライチェーンの更なる強靭化の原資となり、中小受託事業者の経営環境改善に繋げていくべきだと考えています。そのためには原資を活用して人材の確保、育成、設備投資、DXによる生産性改善、事業承継やM&Aなど多くの中小企業が抱えている課題の解決に繋げていく必要があります。
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価格転嫁の支援を通じた中小企業の課題解決、サプライチェーンの強靭化は中小事業者の経営環境の改善に繋がると考えており、引き続き会員の皆様と共に中小事業者のお力になれるように微力ながら活動していければと考えます。
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