飲食店創業・経営の基本を思いつくままに(その3)

強みレポート
筆者紹介
玉井 政彦(たまい まさひこ)
診断士資格登録:1998年(平成10年)4月
神奈川県診断協会入会:2023年(令和5年)9月
1999年10月、鉄鋼会社から子会社に転籍になるのを機会にJICA専門家として2000年1月より2018年3月まで断続的に海外の公的機関・民間企業の従業員への講義、セミナー、各種調査活動等に従事。
2008年~2010年には、ゼンショー・ブラジル現地法人の初代社長として、サンパウロで「すき家」チェーン店舗展開基盤構築に従事。
メールアドレス: m_tmi@hotmail.com
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はじめに

 2025年6月配信に引き続き、同じテーマで論じます。今回は、飲食店開業(小規模事業者)に必要な資格、届出に関する基本的知識をご紹介します。


飲食店創業・運営の際に知っておくべき事項 (その3)

第10要諦:「飲食店開業に必要な<食品衛生責任者>資格を取得する」
  • 「食品衛生法」により、飲食店開業には1店舗に1人必要です。食品衛生責任者を設置しないと飲食店を開業しても営業許可が下りません。
  • 横浜市の場合、「横浜市食品衛生協会」が、食品衛生責任者を養成する食品衛生責任者養成講習を行っています。1日の講習で食品衛生責任者の資格(自治体が管轄する「公的資格」)を取得できます。横浜市食品衛生協会では、令和3年度より「eラーニング方式」による「食品衛生責任者養成講習会」も開催しています。
    講習会内容:公衆衛生学(0.5時間)、食品衛生学(2.5時間)、食品衛生法(3時間)の計6時間。
    受講料: 11,000円
    私も、2025年2月、受講しました。受講当日、食品衛生責任者養成講習会終了証を授与されました(一生涯、有効)。「一般的な衛生管理とHACCP」では具体的な管理内容を勉強できました。
  • よく似た資格名として「食品衛生管理者」があります。この資格は、 国家資格であり食品衛生責任者より上位資格となりますが、小規模飲食店の場合必要はないでしょう。
  • 飲食店を経営するために「調理師免許」は必要不可欠な資格ではありません。
    参考:HACCP(危害要因分析・重要管理点)に沿った衛生管理<小規模事業者の場合>
    全ての食品等事業者は、「一般的な衛生管理」に加えて、「HACCPに沿った衛生管理」の実施が求められます。小規模事業者の場合でも、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」即ち、各業界団体が作成する手引書を参考に、「簡略化されたアプローチによる衛生管理」が求められます。
第11要諦:「飲食店開業に必要な許可の取得と届出をタイミングよく行う」
(1) 食品営業許可(保健所)
開業の2週間前までに保健所に申請(この申請は、店舗が完成しなければ許可が下りない)
(2) 防火管理者選任届(消防署)
開業の7日前までに消防署に届け出
(3) 防火対象物工事計画届出(消防署)
居抜きで前の設備をそのまま使用して、レストランから例えば居酒屋に使用形態を変更するべく工事を行う場合にも当該届出が必要
(4) 防火対象物使用開始届(消防署)
建物の一部を賃借して事務所や販売店などとして新たに使用する場合、建物の新築、増改築、用途変更の場合などに必要
(5) 火を使用する設備等の設置届(消防署)             
・届出の対象となる設備: 炉、こんろ、ボイラー、厨房設備、温風暖房機、乾燥設備など
・届出の対象となる設備の種類や据付け面積、入力(単位:kW)などによって、届出の必要性や時期が異なります。
・届出様式や審査基準、問合せ先などは、管轄の消防署(予防課予防係)に確認してください。

(6) 個人事業の開廃業等届出書(税務署)
個人事業主として店舗を開業した場合は、開業から1カ月以内に税務署に開業届を提出

(7) 労災保険の加入手続き(労働基準監督署)
・労災保険(労働者災害補償保険)とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。
・事業主、役員は労災保険の対象者(被保険者)にはなりません。
・従業員を1人でも雇用している事業所は、労働保険の適用事業所となります。アルバイト、パートを1人でも雇った場合、雇用した日から10日以内に「労働保険関係成立届」を提出。
・全額事業主負担労災保険率: 3/1,000(飲食店の場合)
・ 労働保険(労災保険と雇用保険を総称した名称)の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(「保険年度」)を単位とし、その間ですべての労働者(雇用保険については、被保険者)に支払われる賃金の総額に、その事業の種類ごとに定められた保険料率を乗じて算定します。概算保険料(年度はじめの見込み)と確定保険料(年度終了時の判明額)との差額を清算します。

(8) 雇用保険の加入手続き(公共職業安定所)
・事業主は、従業員を31日以上雇う予定があり、かつ週の労働時間が20時間以上となる場合は、雇用保険に加入させる義務があります(例: 1日4時間で週に5日働いているならば、週の労働時間が20時間以上となるため、雇用保険の対象。但し、学生は対象外)。
・事業主は雇用するアルバイトが雇用保険の加入条件を満たす場合、被保険者となった月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を届出ます。初めて被保険者に該当する従業員を雇用した時、「雇用保険適用事業所設置届」を提出する(雇用した日から10日以内)。
・事業主負担の雇用保険率: 9.5/1,000
・雇用保険は業務形態に関係なく、条件に該当する場合は必ず加入が必要です(アルバイト、パートタイマーでも)。雇用保険は労働者が失業・休業した際などに、給付を受けられる保険です。教育訓練給付金や教育訓練支援給付金なども受けられます。
・労働者が雇用保険の給付を受けるには保険料の支払いが必要(天引きされる金額は、給与額の「6/1,000」: 月10万円のアルバイト料の場合、天引き額は600円。)

(9) 社会保険の加入手続き(日本年金機構)
・健康保険、厚生年金保険、介護保険を社会保険と総称します。
・健康保険、厚生年金保険の加入が義務づけられている事業所:としては下記があります。
*法人事業所で常時、従業員を使用するもの(事業主だけでも)
*常時5人以上の従業員が働く個人事業所

例外:個人事業主として飲食店を開業する場合、健康保険(協会けんぽ)と厚生年金保険については、たとえ従業員を何人雇っても加入義務は原則ありません。社会保険に加入している従業員給与額の約15%の会社負担社会保険料を軽減するため、法人から個人事業主へ変更する「個人成り」を選択する飲食店もあると言われています。
以上

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