強みレポート

JICA専門家としての体験談(その2)

筆者紹介
玉井 政彦(たまい まさひこ)
診断士資格登録:1998年(平成10年)4月
神奈川県診断協会入会:2023年(令和5年)9月
2000年1月よりJICA専門家の一歩を踏み出し、2018年3月まで断続的に海外中小企業経営者・管理職/大学/公的機関への講義・セミナー・講演、及び各種調査活動などに従事。
メールアドレス: m_tmi@hotmail.com

はじめに

 昨年度のメルマガ委員に引き続き、今年度もメルマガ委員として選定されました。よろしくお願いします。今年6月に配信された記事の続編をここにお届け致します。

前回の記事はこちらをクリックしてご覧ください

2007年以降のJICA専門家としての活動

 ODA予算削減(1997年のピーク時の1兆1,687億円の約半分規模)と新型コロナ感染症により、筆者が従事してきたカイゼン関連案件、中小企業関連調査案件が殆ど無くなったこと、高齢で長期案件に手が出せなくなったことから、この7年間は活動無しです。前号でお約束した2007年以降の活動内容は、プロジェクト・タイトルのみでご容赦ください。

下記のプロジェクトを手がけました。時系列順(時期・期間を省略)で列記。
*カザフスタン・マンギスタウ州地域振興マスタープラン策定事前調査(経済産業動向担当)
*ウクライナ日本センタービジネスコース運営管理
*カンボジア日本センタービジネス研修コース(マーケティング)指導
*日系研修に係るグッドプラクティス及びニーズ調査(ブラジル調査担当)
*カンボジア日本センタービジネス研修コース(リーダーシップと人材育成管理)指導
*バーレン国コストシェア技協プロジェクト(カイゼン普及)
*中南米日系社会との連携調査(民間セクター)<アルゼンチン・パラグアイ担当>
*サウジアラビアにおけるカイゼン普及情報収集・確認調査
*サウジアラビア王国公的機関におけるカイゼン普及情報収集・確認調査(SASO/KFPC)へのトライアル・カイゼン活動展開指導総括)
(注)SASO:サウジアラビア標準化公団/KFMC:King Fahad Medical City(ファハド国王記念病院)にて、  カイゼン活動を実質的に展開、両組織内にカイゼン活動を定着させる素地を構築した。

 従事したJICA専門家活動から、自分の専門性の帰属する分野が、カイゼン・総合的品質管理であると認識できました。診断士資格を取得した当時、自分の専門性は何に求められるのだろうかと悩みました。鉄鋼会社勤務で経験した業務からは専門性が見えなかったのが、JICA専門家活動で悩みが解決されました。皆さんの専門性はどこにあるのか、お考えになられたことがおありでしょうか?
2017年当時のSASO総裁と筆者
SASOカイゼン活動幹部
(筆者右:副総裁)

JICA日本センターの設立意図と活動

 筆者はJICAの日本センター3か所で仕事をする機会を得ました。日本センターは、現在、中央アジア・東欧域、東南アジア域の9か国10か所に設置されています。日本センターで中小企業の方々へのご指導ができました。
日本センターは、市場経済移行国のビジネス人材育成と日本との人脈形成の拠点として構想されたもので、2000年より順次開設されました。ビジネスコース以外に日本語コースと相互理解促進事業の3本柱で運営され、当時、それぞれの部門に長期に専門家が派遣されていました。

総合的品質管理管理(TQM)とカイゼン

 TQMは全ての管理活動、即ち、生産管理、人事管理、販売管理他の管理活動にも有用なツールとなります。TQMについては、診断協会の会報で取り扱う予定です。カザフスタン日本センターでバランス・スコアカード(BSC)講座で好評を得たことがありますが、この技法はアメリカの学者と経営者がTQMをうまく論理展開したものと思いました。マーケティングの神様、フィリップ・コトラー氏が、彼の著作(ミレニアム版)でTQMを詳細に紹介したことがあります。

 筆者は、英文PPT講義資料で、カイゼンを次のように定義してきました。
“Kaizen is a small but continuous activity for improving the current situation without investing a lot of money to get a better situation. Current situation means Q, C, D, S, E, M, and M, which stand for Quality, Cost, Delivery, Safety, Environment, Morale, and Motivation respectively.” (カイゼンとは、多額の投資をせずに現状を改善し、より良い状況を得るための小さくても継続的な活動。現状とはQ、C、D、S、E、M、Mのことで、それぞれ品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)、安全(Safety)、環境(Environment)、士気(Morale)、そして動機(Motivation)を意味する。)

 また、"There are two kinds of kaizen. One is Small Kaizen, and the other is Big Kaizen (Innovation)."(改善には二つの種類がある。一つは小さな改善で、もう一つは大きな改善(革新)。)として、筆者は二つの改善の有用性を説明していました。

終わりに

 2000年~2010年頃までは、カイゼン関連のJICA案件が数多くあったと記憶しますが、昨今、海外からの要請がなくなったのか姿を消しました。カイゼンは、人の創意工夫に代えて、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)が、その役割を担い始めたのか?

 2017年1月、サウジアラビアで出会った日本人技術者が、「IT技術がカイゼンを駆逐する」と豪語したのを思い出します。カイゼンを次号に譲り、本稿を終えます。
以上

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