強みレポート

労働集約型に終始しないススメ
~逆境こそチャンス~

筆者紹介
小林 祐介
中小企業診断士(2015年登録)、キャリアコンサルタント、FP2級。総合電機メーカーに勤務し、IT(SIer)事業の経営企画・管理に従事中。2023年6月、登録グループ「ほったらかしビジネス実践研究会(ほったらかし研)」を設立。

動画はこちら https://youtu.be/mXBXqj8ePkE

はじめに

 日本の名目GDPは2010年に中国に抜かれ、そして2023年にはドイツに抜かれ、世界4位に後退しました。日本の成長が長らく停滞している理由は色々あると思いますが、理由の一つとして、労働力に依存した働き方やビジネスから進化できていないことに起因していると考えます。高齢化と人口減少で労働力が減少する中、日本人は自由時間を犠牲にして長く働いているのに関わらず、労働生産性や可処分所得はドイツ人より低く、また、日本のデジタル競争力(2023年で世界32位)や幸福度(同47位)も低い現状です。

 そもそも労働集約型な働き方やビジネスに終始していると、スケールアップしづらく、長時間労働や過労死などの問題も起こり得ます。今後、人口減少と高齢化が加速し、企業(特に中小企業)では人材不足等が深刻化するのは想像に難くありません。
このような現状を踏まえ、このまま労働集約型な働き方・ビジネスに終始していてよいのでしょうか?労働集約型依存から脱却し、高付加価値労働に進化すべきではないでしょうか?筆者は上記課題に向けたアプローチ策として「ほったらかしビジネス」に取組むことを提案します。

ほったらかしビジネスとは?

 ほったらかしビジネスとは、労働力に依存せず収益を生み出す(半)不労所得型ビジネスを意味します。ヒトが頭で汗を書いて仕組みやコンテンツを作り出した後は、自走式で、主にモノ/カネ/情報がお金を稼いでくれるビジネスモデルです(例:無人・自動販売、無人サービス、ITサービス、コンテンツ、著作物他)。果実(金)のなる木と捉えることが出来、こうした木があれば、目の前の人参・獲物ばかり追わずに、木陰で休息を取ったり、果実を食べて豊かに暮らすことが出来ます。

 企業も人も、労働力への依存度が低いほったらかしビジネスを育て、ポートフォリオの一つに据えることで、ライフワークや高付加価値労働に取組める余裕(精神的・経済的余裕)が生まれ、豊かになると考えます。また、余裕があると、突然のチャンスが掴みやすくなりますし、選択肢が限定されにくくなります。ほったらかしビジネスは、知識集約型に見えて労働集約型な仕事が多い診断士、またリソース・資産の乏しい中小企業にとって取組む意義が高いと考えます。また、診断士としてコンサルに活かせるビジネスの経験値(知)が得られる点も魅力と言えます。

 筆者も実際にほったらかしビジネスに取組んでおり、2020年より無人の貸会議室業を展開しています(都内大崎・五反田に3店舗運営)。転貸可能な賃貸物件を借りて、時間貸しで提供。買わない不動産投資とも言われ、初期費用が安く撤退も容易。物件を増やすことで大きく育てることも出来ます。また、予約がない時は自ら利用出来るため、実益も兼ね揃えたビジネスです。その経験値(知)をもとに、以降、ほったらかしビジネスについて掘り下げて論じます。

ほったらかしビジネスのポイント

 ほったらかしビジネスは、IT(各種ポータルサイトやプラットフォーム)を活用することで比較的楽にビジネス展開できます。ただ、完全にほったらかしではなく、仕組みを構築した後も、アヒルの如く水面下で足を動かし続け、前進と軌道修正を行う必要があります。また、極力省力化すべく、自前主義にならず他者をうまく取り込むことも重要です(例えば、筆者の場合、ギグワークス、IT、さらには委託会社も活用して、運用の極小化に努めています)。

 また、同ビジネスに取組む際は、①低リスクで小さく始めること、②ITを活用すること、③避けられない潮流や廃りのこないものに取組むことが重要です。①について補足すると、いきなり多くの時間とコストをかけてゴールに向かっていくのは大きなリスクが伴います。一方、何が必要かを確かめながら進めていくと成功しやすくなります。これはMVP(Minimum Viable Product)という考え方で、これをほったらかしビジネスにも適用させて、まずは小さく始めて、うまくいけばビジネスを大きくしていくとよいでしょう。

おわりに

 以上、新たにほったらかしビジネスに取組む視点で述べてきましたが、もちろん既存事業をどうほったらかし化(省力自動化×創意工夫)するかという視点もあります。そういった視点で言うと、どのビジネスにおいても、ほったらかし化する余地・必要性があると言えます。逆境こそチャンスです。労働力が減少する厳しい事業環境の今こそ、IT/AIをフル活用しつつ、ヒトの創意工夫で、ほったらかしビジネスにシフト・注力する時です。ほったらかし研と一緒に学び、取組みましょう。

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